「あ、かにさんいた!」
砂の中から出て来た蟹に気づいて、貴斗が駆け出していく。一メートルほど先にしゃがみ込むと、熱心に観察し出した。今は引き潮だからそう危なくないだろう。貴斗の好きにさせておく。
「写真見てみる?」
「うん!」
映っていたのは、私と貴裕さんに挟まれて、弾けんばかりの笑顔を見せている貴斗と、照れくさそうな、ぎこちない笑顔を浮かべた私。そして幸せそうに微笑む貴裕さんの姿だった。
「……嬉しい」
思わず口をついて出た言葉に、自分で驚いた。本当にこんな日が来るなんて思っていなかったのだ。貴斗と貴裕さんと私、親子三人で一枚の写真に納まる日が来るなんて。
「……俺も、夢みたいだよ」
離れていたはずの手が、もう一度私の肩を抱く。ハッとして顔を上げると、その手に力がこもったのがわかった。
ふたりの視線が絡んで、引き寄せあう。気づいた時には、キスをしていた。唇が触れていたのは、ほんの一瞬。でもその一瞬を、永遠のようにも感じた。
「……いきなり、ごめん」
「ううん! わ、私こそ……」
すぐに我に返り、パッと体を離す。貴斗は……、砂にもぐろうとしている蟹に夢中だったみたい。よかった、見られていなかった。
でも、私と貴裕さんの微妙な変化を子供なりに感じ取ったのかもしれない。
「ママ、おかおまっかよ?」
こちらを向いた途端、そんな鋭いことを言う。
慌てふためく私と、吹き出す貴裕さんを見ると、貴斗は不思議そうに首を傾げていた。
砂の中から出て来た蟹に気づいて、貴斗が駆け出していく。一メートルほど先にしゃがみ込むと、熱心に観察し出した。今は引き潮だからそう危なくないだろう。貴斗の好きにさせておく。
「写真見てみる?」
「うん!」
映っていたのは、私と貴裕さんに挟まれて、弾けんばかりの笑顔を見せている貴斗と、照れくさそうな、ぎこちない笑顔を浮かべた私。そして幸せそうに微笑む貴裕さんの姿だった。
「……嬉しい」
思わず口をついて出た言葉に、自分で驚いた。本当にこんな日が来るなんて思っていなかったのだ。貴斗と貴裕さんと私、親子三人で一枚の写真に納まる日が来るなんて。
「……俺も、夢みたいだよ」
離れていたはずの手が、もう一度私の肩を抱く。ハッとして顔を上げると、その手に力がこもったのがわかった。
ふたりの視線が絡んで、引き寄せあう。気づいた時には、キスをしていた。唇が触れていたのは、ほんの一瞬。でもその一瞬を、永遠のようにも感じた。
「……いきなり、ごめん」
「ううん! わ、私こそ……」
すぐに我に返り、パッと体を離す。貴斗は……、砂にもぐろうとしている蟹に夢中だったみたい。よかった、見られていなかった。
でも、私と貴裕さんの微妙な変化を子供なりに感じ取ったのかもしれない。
「ママ、おかおまっかよ?」
こちらを向いた途端、そんな鋭いことを言う。
慌てふためく私と、吹き出す貴裕さんを見ると、貴斗は不思議そうに首を傾げていた。



