翌日の月曜日。今日はもう貴斗も保育園はお休みにして、朝の涼しいうちにひぐらし荘から徒歩で行けるスポットで親子三人で釣りをすることになった。仕事は素子さんが遅番にしてくれた。

「ママ、パパ、はやくおいでー」

 数歩先を駆けていた貴斗が、後ろを振り向く。私と貴裕さんに向かって、小さな手を上に掲げ、おいでおいでをする。

「貴斗待って、そんなにはしゃぐと転んじゃうよ。――あっ、ほら言わんこっちゃない」

 言った傍から、小石に躓いて転んでしまった。

「……うっ、わぁーん!」

 慌てて駆け寄り、地面に座り込んだまま派手な鳴き声を上げる貴斗を抱き上げようとした。

「ちがう、ママじゃなくてパパ」

「えっ?」

 しゃくりあげながら、私ではなく貴裕さんに向かって手を伸ばす。

「……パパ、かぁ」

 困ったなぁなんて言いながら、持っていた荷物をそそくさと私に預ける。まんざらでもなさそうな顔で貴裕さんは貴斗を抱き上げた。

「貴斗、けがしてないか?」

 日焼け対策で通気性のいい長袖、長ズボンを着せていたのが幸いしたのか、どこも怪我はしていないようだ。貴裕さんの横から、ウェットティッシュで顔についた砂を拭き取ってあげた。