その夜はまた、ひぐらし荘で宴会になった。
智雄さんが腕に縒りを掛けた海鮮料理がたくさんテーブルに並ぶ。当の智雄さんは、食事の用意が終わると「用事がある」なんて言って奥の部屋に引っ込んでしまった。
「ごめんね、美海ちゃん。融通の利かない人で」
「ううん、気にしてないよ」
智雄さんの貴裕さんに対する態度は相変わらずのようだ。でも智雄さんがああなのは、私と貴斗を思ってのこと。それはちゃんとわかっているつもりだ。
それに、もし父が生きていたら……。
「……お父さんが生きてたら、智雄さんみたいに反対してたかな」
記憶の中の父は、私が高校生だった頃のまま。年中海に出ているから真っ黒で、思春期の頃はそれを恥ずかしく思うこともあった。
海の男らしく無口で一見不愛想だけれど、本当は心優しい、家族思いの人だった。男手ひとつで、私のことを大切に育ててくれた。
「どうかしら。美海ちゃんと離れるのは寂しいだろうけど、それよりもあなたが幸せならいいって言って、案外気持ちよく送り出してくれたんじゃないかしらね。きっと湊もそうだったと思うわ」
「そうだね……」
両親に貴斗を会わせてあげたかった。それだけは、どれだけ願っても、もう叶うことがないのだ。
智雄さんが腕に縒りを掛けた海鮮料理がたくさんテーブルに並ぶ。当の智雄さんは、食事の用意が終わると「用事がある」なんて言って奥の部屋に引っ込んでしまった。
「ごめんね、美海ちゃん。融通の利かない人で」
「ううん、気にしてないよ」
智雄さんの貴裕さんに対する態度は相変わらずのようだ。でも智雄さんがああなのは、私と貴斗を思ってのこと。それはちゃんとわかっているつもりだ。
それに、もし父が生きていたら……。
「……お父さんが生きてたら、智雄さんみたいに反対してたかな」
記憶の中の父は、私が高校生だった頃のまま。年中海に出ているから真っ黒で、思春期の頃はそれを恥ずかしく思うこともあった。
海の男らしく無口で一見不愛想だけれど、本当は心優しい、家族思いの人だった。男手ひとつで、私のことを大切に育ててくれた。
「どうかしら。美海ちゃんと離れるのは寂しいだろうけど、それよりもあなたが幸せならいいって言って、案外気持ちよく送り出してくれたんじゃないかしらね。きっと湊もそうだったと思うわ」
「そうだね……」
両親に貴斗を会わせてあげたかった。それだけは、どれだけ願っても、もう叶うことがないのだ。



