官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました

「アジでしょ、これはメバル?」

「正解。こっちは赤シタビラメ、これがスズキ。よくムニエルにするやつだな」

 船長さんが、魚の名前や、どう調理するのがおススメなのかを教えてくれる。

「すごいすごい! おちゃかないっぱいね~」

 貴斗も、大漁の魚にすっかり気を引かれている。足をバタバタさせて降りたがるので、貴裕さんは貴斗を解放した。

「貴斗、俺もたくさん釣ってきたんだけどな」

「ママ、おにいちゃんのもみたい!」

「いいわよ」

 貴裕さんが近くに置いてあった小さめのクーラーボックスを開けて見せると、貴斗は興味津々といった様子で覗き込んでいる。

「貴斗魚が好きなんだろ? これ全部貴斗のために釣ってきたんだよ」

 貴斗は目をキラキラさせて「ほんと?」と聞いている。まだ生きている魚も入っていたらしく、貴斗は指先でつついたりして甲高い声を上げて笑っている。

 今日の釣果は、この大小ふたつのクーラーボックス分ということらしい。

「大漁じゃない。とてもじゃないけど一日じゃ食べきれないね」

「美海、車で来てるんだろ? 俺ら先に帰るから、時田さん乗せてきてあげてよ」

 船釣りに参加したついでに、今日は雄ちゃんがお客さんの送迎を担当している。みんな朝が早くて疲れているだろうし、早く帰って夕食までに宿で休んでもらおうと思ったのだろう。