官能一夜に溺れたら、極上愛の証を授かりました


 お弁当を食べ終え、車の中で涼んでいると、沖の方から港を目指す一隻の遊漁船が見えた。

 ひぐらし荘では、地元の業者に頼んで釣り船を出してもらっている。今日は確か十人乗りのシャフト船を予約していると言っていたから、たぶん今入港してきた船で間違いない。

「貴斗、お船のところに行ってみようね」

「わぁい、おふね! はやくいこう、ママ」

 港の駐車場に車を停め、船着き場へと急ぐ。港内に入ってスピードを緩めた船の上から、私達に向かって大きく手を振る人がいる。

「あ、おにいちゃん! こっち、ここよ~」

 貴斗が気づいて、精一杯背伸びをして手を振り返していた。

「ママ、いこう」

「あっ、待って貴斗!」

 先に駆け出して行こうとした貴斗を必死で止める。

「海に落ちちゃうから、走っちゃダメ」

「はぁい、ママ」

 小さな手をギュッと握る。ふたりで手を繋いで歩いていくと、貴裕さん達を乗せた船が、ちょうど着岸したところだった。

「美海、貴斗!」

 船のデッキから、貴裕さんが手を振っている。貴斗も背伸びをして、貴裕さんに手を振り返している。はずみで海に落ちそうで怖かったので、私は貴斗を抱き上げた。すると。

「おいで貴斗」

 船の上から、貴裕さんが両手を伸ばした。

「はい」

 貴斗も迷いもなく手を伸ばす。貴裕さんに抱かれると、貴斗はにっこりと微笑んだ。