「なんか、心臓がドクンドクンしてる……。紫音は?」

「俺も、少しだけ体が熱い」

「これで、番になれたのかな……?」

「うん、そのはず」

 紫音はじっと私のことを見つめてから、ぐいっと腕を引っ張って抱きしめる。

 体が触れ合うと、もっと心臓がうるさくなったけど、紫音の体と一体化するような、そんな心地よさがあった。

 その時、多分お互いに確信した。私たちはちゃんと、番になれたのだと。

「もう一生離れられないよ、俺から」

「はは、怖い言い方するね」

「残念だったね、俺みたいなαに捕まって」

 紫音はちゅっと私の頬にキスをしてから、私の頬に手を添えてまっすぐ目を見つめてくる。

 ただの幼なじみだった頃が思い出せないほど、紫音にドキドキしている。

 自分がΩだと分かってから、一年間が過ぎていた。今日この日まで、本当に本当に色んなことがあった。

 多分この先も、人一倍波瀾万丈な人生になることは間違いない。

 だけど、“本能”で分かっている。
 紫音と一緒なら、何もかも、大丈夫だってこと。

「千帆と出会ってなかったら、俺はきっと誰にも心を開かずに生きてただろうな」

「え……?」

「小学生の頃から、俺が千帆のこと好きだったの、気づいてないよね?」

「え、そうなの⁉︎」

 驚き声を上げると、紫音は「だろうね」と呆れた顔になる。

 ま、まさかそんな昔から、恋愛感情を持っていてくれたなんて……。

 申し訳ないけど、小学生の頃は恋なんて全然知らなかったし、紫音のことは頼りになる幼なじみとしか思っていなかった。

 私たちはもう高校生なわけで、紫音は何年私のことを想っていてくれたんだろうか。

「いつも千帆に会いたいのは俺の方だし、好きって気持ちも絶対俺の方が大きい。俺は千帆がいないとダメだけど、千帆はきっとそうじゃないしね」

「そ、そんなことないよ……?」

「いいんだよ、それで。ずっと好きでいてもらうために、頑張れるし」

 紫音はフッと静かに笑うと、私の肩を優しく両手で持って、ベッドの上に押し倒した。