も、もしやまた喧嘩始めてる……?

 こんな時でさえ?

 紫音と三条君の間にバチバチと火花が散っている様子を、私はハラハラしながら見守ることしかできない。

 ハア、できれば仲良くして欲しいんだけど、そんな日は来ないのかな……。

 なんて思ってると、三条君がチラッと私の方を見て、急に優しい口調になった。

「まあでもさすがに今は、二人の間に入ろうとは思えないかな」

「え……?」

「……あんなに、全然ブレない千帆ちゃんの姿見たらね」

 三条君は少し切なげに笑って、そうつぶやいた。

 紫音はぎゅっと私の肩を抱いたまま、三条君くんのことを見上げている。

「紫音君、レストラン会場にあるカメラ、証拠として警察に渡しておくね。これ以上被害者が出ないうちに」

「ああ、もうあの女がどうなろうとどうでもいいからな」

「じゃあ、ちょっと下で映像集めてくるよ。二人は休んでて」

 鈴山さん……。紫音のことが好きで、こんなことをしてしまったのかな……。

 真相は分からないけれど、危険な薬を使うことは良くないから、自分の行いの危うさに気づいて欲しいな。

 いつか、αとかΩとか、そんな壁を取っ払って、世界を見れますように……。

 バタンとドアが閉まって、私と紫音は部屋に二人きりになる。

 私たちは、じっと見つめあってから、どちらからともなくそっと手を握り締めあった。

「ありがとう、千帆……」

 目を瞑り私と額をくっつけて、紫音が少し震えた声でそんなことをこぼすもんだから、少しだけ涙腺が緩んでしまった。