◼️幼なじみの関係 side千帆

 なんだか昨日から紫音の様子がおかしい。

 しかも、いきなりキスして来たくせに急に朝起こしに来るのをやめて、学校で会ったらいつも通りの態度だし。
 
 紫音の考えていることが全然わからない。

「千帆! 今日の放課後ラーメン食べに行かない? 私好みな死ぬほど味濃い系のお店見つけてさー」

 放課後、紫音に指定された教室に向かおうとしたところ、友人の香織ことかおりんが、意気揚々と話しかけてきた。

 黒髪の毛先を内巻きにした、清楚な見た目とは反対に、かなり大食いの彼女は美味しいお店を見つけるといつも誘ってくれる。

 一緒に行きたかったけれど、今日は紫音にタイマンを挑まれてしまったので断らざるを得ない。因みに紫音は先にさっさと教室を出ていってしまったので、もうここにはいない。

「かおりん、ごめんよ。今日は紫音に呼ばれてて……」
「え! 紫音様に!? そんなんそっち優先して当たり前でしょうが!」

 目に血を走らせながらそう言うかおりんに気圧されて、私は一歩後ろへさがる。“様”って……。紫音は同い年なのに……。

「かおりんの言う通りだよ、千帆。幼なじみにαがいるなんて、眼福すぎて最高じゃない? 学校が十校あってもひとりαがいるかどうかも怪しいくらいの確率なのに……」

 かおりんと私の間に、もうひとりよく話す友人・竹蔵(タケゾー)が割って入って来た。