この前紫音のパーティーに行った時は、結局落ち着いて食べられなかったから、ここで取り戻さないと!

「紫音! ちょっとお肉取ってくるね!」

「あ、バカ、勝手に……!」

 意気込んだ私は、紫音を置いて人混みを掻き分け、お目当ての食材の近くにいく。ひとまずローストビーフをお皿に持って、口に運ぼうとしたその瞬間、ポンと肩を叩かれた。

「……千帆ちゃん?」

「ん、さんじょうふん!」

 もぐもぐしながら振り返ると、そこには少し驚いた様子の三条君がいた。

 ボルドー色のスーツをぴしっと着こなしている彼は、本当に異国の王子様みたい。

 というか、このお肉、本当に美味しい〜!! 何枚でも食べられる!

「びっくりした、全然千帆ちゃんの雰囲気違ったから……」

「紫音のお母さんに全部やってもらったの。ていうかそんなことより三条君、ローストビーフすっごく美味しい!」

「えー、待って……、反則級の綺麗さなんだけど……」

 三条君は口元を手で隠しつつ、急にとろんとした目つきで私を見つめ始める。

 そんなにローストビーフを食べたいなら、いくらでもあるから三条君も食べればいいのに……。

 なんて思ってると、急にうしろからグイッと誰かに腰を抱き寄せられた。

「見るな、消えろ」

 鬼みたいな顔をした紫音が、私の体を強く引き寄せながら、三条君に喧嘩を売る。

「えー、それ、ホストに言う言葉? 挨拶済んだらとっとと帰ってくれていいよ。紫音君」

「千帆が満足したらすぐ帰る、言われなくてもな」

「何言ってんの? 千帆ちゃんは置いていきなよ。部屋取ってあるし」

 まただ、また始まった……。