たしかに、かおりんの言う通り、あとで電話でもして声を聞こうかな。

 なんて思っていると、タケゾーが急に何かを思い出したように「あ!」と声をあげて、私に一冊のノートを押し付けた。

「千帆のノートも二人で代わりばんこで取っておいたから」

「え!」

 予想外の優しさに、思わず驚く。ノートを受け取った瞬間、じーんと二人への愛が溢れ出てきた。

「二人が優しい……! ヒート万歳……!」

「普段優しくしてないみたいじゃない」

「タケゾー、かおりん、ありがとう〜!」

 感激しながらお礼を伝えると、二人は「はいはい」とテキトーに返事をした。

 紫音の様子は心配だけど、私は心の底から二人に久々に会えて嬉しいし、やっと学校に来られて楽しい。

 日常のありがたみを知れるのでヒートも悪いもんじゃないと思っていると、急に二人の視線が私の背後に集まっていることに気づいた。

 不思議に思い振り返ろうとするとーー、急に誰かにうしろからハグをされた。

「千帆ちゃん、久しぶり」

「わっ、三条君!」

「今日も甘い匂いさせて、俺を誘惑してるの?」

「してない、してないよ!」

 うしろから抱きついてきたのは、今日もアイドル並みにキラキラしてる三条君だった。

 アッシュ系の金髪は艶々で、今日も美肌を輝かせている。この距離で見ても全てのパーツが美しい。

 ぐ、眩しい……! 紫音に対しても未だにそう思うときがあるけれど、美が過剰で胃もたれする!

 しばらく驚き固まっていたけれど、周りの女生徒からの針のような視線を感じて、私はすぐに三条君を突き放した。

「ちょっとあの、三条君みたいな人に不用意に触れられると命が危ないんで……!」

「今日あの番犬君お休みだから、今のうちに触っておかないと」

「私なんか触ったってなんのご利益もないよ……!」

 サッとタケゾーの後ろに隠れて警戒心を剥き出しにするけれど、三条君は爽やかな笑顔を浮かべている。

 公園での出来事があって依頼、やたら熱い視線を感じるようになった気がするのは、なぜだろうか……。

 どっちみち、紫音がいない時は二人きりにならないようにしないと!

「タケゾー君、今日一日千帆ちゃんのこと貸してくれる?」

 三条君はまっすぐにタケゾーを見つめて、突然お願いをする。

 私はハッとして、タケゾーに「助けて!」と伝えるけれど、タケゾーの目はハートになっていた。そして、隣にいるかおりんも同じくだった。

「どうぞ、うちの娘でよかったら……」

 タケゾーの言葉に、私は速攻でツッコミを入れる。

「娘って誰のこと⁉︎ タケゾー、気を確かにして!」

「タケゾー君、ありがとう。じゃあ千帆ちゃん、今日の放課後空けておいてね」

「はい!」

「なんでタケゾーが元気に返事してるの⁉︎」

 なぜかタケゾーと三条君の間で、私が放課後三条君と過ごすことが決まってしまった。どういうことなんだ……。