自分も欲情しやすくなっているせいだろうか。お酒を飲んだらこんな風になるのかなと思うくらい、触れた部分から熱くなってふわふわする。

 必死に抵抗するも、紫音は至る所にキスを降らせてきた。紫音の生乾きの髪が首に触れて、くすぐったくて、恥ずかしい。

 目をぎゅっと瞑って、紫音の甘いキスに応えていると、突然唇を離した彼がいじわるそうに私のブラ紐に人差し指をかけて、妖艶に言い放った。

「ダメじゃん。抵抗しなきゃ、止まんないよ?」

「なっ、だって紫音が……! じゃあもう終わり! ストップ!」

 カーッと羞恥心でいっぱいになりながら、私は紫音の体を無理やり引き剥がす。

 やっぱり紫音は、こういう時すごく意地悪な気がする……!

 赤面しながらじっと睨んでいると、「誘ってんの?」と言われたので彼のお腹にグーパンチをしておいた。

 それから、地上から「なんで湯町こんなところで寝てんの!?」という男子生徒の声が聞こえて、紫音は助けを呼んだ。

「おい、手貸して引き上げてくれ」

「え! 伊集院と花山さん!? 何があったのいったい!」

 そうして、焦るクラスメイトの手を借りて、私たちは地上に出ることができた。

 湯町君は私を襲った時の記憶は失恋のショックで相殺されていたようで、正直にかなりホッとした。

 ……そして、Ωという自分の体質と、改めて向き合わなければと思った夜だった。

「千帆。明日は一番に山駆け降りるぞ。体力回復させておけよ」

「無理に決まってんじゃん!」

 戸惑う方はまだまだたくさんありそうだけど、紫音がいれば、きっと大丈夫。

 そうだよね? 紫音。

 目尻に残った涙を自分で拭って、私は笑顔で山小屋の中へ戻っていった。