「あの、こんなに構ってくるのは、私がΩで、紫音がαだからだよね……? 私にちょっかい出しても、紫音への嫌がらせにはならないよ、きっと」
「嫌がらせ? 君面白いこと言うね。俺が紫音君のこと嫌ってるとでも?」
「うーん、嫌ってるというか、自分以外のαを認めたくなさそうというか……」
「はは、自分のことには鈍感なのに、意外とその辺感じ取れるんだね」
面白いね、と、全く笑ってない瞳で言うもんだから、少し背筋がゾッとした。
彼は私の頭をぽんぽんと撫でると、囁くような声でこう言い放つ。
「今日の放課後、二人きりになって話そうよ。Ωの君に伝えたいことがあるから」
「え……? だったら今ここで」
「俺の悩み相談でもあるんだ。同年代のΩと会ったのは初めてだし。他の人には聞かれたくない」
真剣な声でそう言われて、明らかに怪しいと分かっていても、相談と言われると断れない。
私はうーんと考え込んでから、「少しだけなら」と一言添えて、三条君のお願いを聞き入れた。
一応、紫音にもこのことは報告しておこう。
「あ、安心して。紫音君も呼ぶつもりだから」
「えっ、そうなの?」
「今朝のこと謝りたいしね。じゃあ、また放課後、この屋上に集まろう」
ニコッと笑って、三条君は去っていった。
隣に倒れていたかおりんとタケゾーはいつのまにか正気に戻っており、三条君の後ろ姿を見つめている。
「ねぇ、かおりん。なんか、三条君って美しいけど目の奥笑ってないね……?」
「あ、タケゾーもやっぱりそう思う?」
二人のそんな会話に私も静かに頷きながら、不思議な空気感を持った三条君が相談したいこととはいったいなんなのか、考えを巡らせた。