α同士がこんな狭い教室内で会うことなんてかなり稀みたいだし、三条君は相当紫音のことを意識しているっぽかった。なんか、二人の間に火花すら見えたし……、α同士でしか感じ取れないことがあるんだろうか。

 お弁当を食べながらそんなことを考えていると、何やら黄色い声と共に誰かが屋上へとやってきた。

 くるっと入り口の方を振り返ると、そこには絵に描いたようなハーレム状態の三条君がいた。

 す、すごいっ、漫画みたいだ……!

 かおりんはその光景を見て、「紫音様ファンが推し変してる!!」となぜか怒りを爆発させている。

 紫音があんな風に何人もの女の子を連れて歩いて回るなんてこと、絶対にありえないし……。

 遠巻きにその様子を見ていると、偶然バチッと三条君と目が合ってしまった。

 すると、彼はニコッと瞳を細めて、一旦女の子を置き去りにして、私の方へ向かってくる。

 えっ、えっ、えっ、ちょっと待って……!

 戸惑っている隙もなく、三条君は私の目の前に屈んで私の顔を覗き込んできた。彼のオーラに当てられたのか、かおりんとタケゾーがなぜか目を押さえてその場に倒れ込んだ。

「見つけた、千帆ちゃん。ここにいたんだ?」

「こ、こんにちは……?」

「お昼はあの番犬と一緒に食べてないの?」

「番犬……? あ、紫音はいつもひとりで学食派なので」

「そうなんだ。じゃあ今アプローチしちゃおうかなー?」

 突然妖艶な笑みでスルッと髪の毛を触られたので、私は反射的にパッと顔を避ける。

 三条君はそんな私を見て、「あれ、フェロモン感じない?」と不思議そうに見つめている。

 フェロモン……というか、キラキラしたオーラは感じるけれど、特別ドキドキしたりはない。Ωとαなら惹かれ合うはずなのかもしれないけれど、今は不信感の方が勝っている。

 私は勇気を振り絞って、三条君に言いたいことを伝えた。