本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~

 紫音はフリーズしてその場に固まっているように見えたけど、そんなこともう知らない。

 紫音と教室で会いたくないから、一限はサボってやる!

 そう心に決めて、私は人がいなさそうな空き教室を探して回った。

 チャイムが鳴り、生徒はぞろぞろと自分達の教室へと向かっていくが、私は逆走。

 涙をこれ以上流さないように乱暴に腕で拭うと、私は校舎の奥にある空き教室に入った。

「ふぅ、ここなら人はいないはず……」
「おい、誰だ入ってきたのは」

 え?
 誰もいないと思い入った教室には、数人のヤンキーじみた生徒が黒いオーラを出してたむろしていた。

 この学校では珍しい、全員絵に描いたような金髪のヤンキー三人が、急に教室に入ってきた私をじろっと睨みつけている。

 こ、怖……。眉毛無……。

「す、すみません、完全に間違えました。失礼しました……」

 笑って誤魔化してその場から逃げようとしたけれど、ヤンキーのひとりにドアを押さえつけられてしまった。

 あれ、やっぱり誤魔化せてないですか?
 ここもしや、君たちのアジト的なところでした?
 すぐ出てくので許してください!

 心の中で半泣き状態のまま、私は全力で頭を下げる。

「ごめんなさい! 許してください! もう二度とこの教室に来ません記憶から消します!」
「君、一年生? よく見たら可愛いねぇ~。少し俺たちと遊ぼうよ」
「いや、えっと……!」
「てかなんか、色気すごくない? 近寄ると変な気分になってくるっていうか……」

 すりっと、ひとりのヤンキーが私の髪の毛に顔を近づけて匂いを嗅いできた。

 ぎゃー! 気持ち悪いよー!

 心の中で叫びながらも、この状況を回避する方法を必死に探す。

 色気がどうのって言ってたけど、もしかしてこれもΩの特性なの……?

 さっき紫音が『他のαやβがお前のこと襲ったら困るからに決まってんだろ』と言っていたことを思い出す。

 紫音はこんな状況になることを心配して、番になると言ってくれていたの……?

「ちゃんと顔見せろよ。いつまでも怯えてないでさ」
「い、痛っ……」
「待って、本当に可愛いね、君」

 明らかに興奮状態になっているヤンキー達を前に、みるみるうちに体温が下がっていく。

 どうしよう、紫音。さっき大嫌いって言った手前、助けてなんて呼べないよ。