本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~



 紫音もきっと呆れてるだろうと思い視線を上げるとーー、目の前に紫音の顔があった。

「え……」

 驚いたのも束の間、唇にチュッと優しく、紫音の唇が触れる。

 その瞬間、「いいですねー!」というカメラマンさんの声が上がり、シャッター音が増えた。

 ポカンとした顔で紫音を見上げると、彼はドキッとするくらい優しい眼差しを向けていた。

「……周りに特別扱いされる度に、孤独を感じてた。千帆に出会うまでは」

「紫音……」

「でももう、全部大丈夫だ。千帆がいるから」

 その笑顔に、胸の奥の奥が、ギューッと苦しくなった。

 私たちが出会ったのは、本当にただの偶然で、奇跡だ。

 そしてたまたま、紫音はαで、私はΩだった。

 フェロモンに振り回されたせいで、自分の感情を見失いそうになって怖くなったこともあったけれど、今はこの関係を楽しみたいと思ってる。

 ーー本能でも、心でも、紫音を求めている。

「紫音、ずっと一緒にいようね。大好きだよ」

 私も笑ってそう伝えると、紫音はさらに優しく目を細めた。

 幸せな瞬間をおさめるように、シャッターが何度も切られる。

「いい笑顔ですね、お二人とも!」

 カメラマンさんの言葉に、二人して照れ臭さ全開で、また笑いあった。

 遠くで家族と友人たちが冷やかしてくる声まで聞こえてくる。

「二人とも、お幸せにー!」

 声を揃えて届いた声援に、私たちは共に手を振り応える。

 ……どれだけ紫音が大切か、まだ上手く言葉にできないけれど、やっぱりあの言葉がしっくりくるよ。

 フェロモンが作用してしまうこの関係も、全部受け入れて、紫音と一緒に生きていきたい。それを全部ひと言にまとめるとしたら、この言葉しかない。

 これからも、君をーー“本能レベルで、愛してる”。
 

end