「あーん、僕も紫音様と話したいのにー」

 タケゾーがそうこぼすと、三条君が「それならすぐにこっちに呼べる方法あるよ」と、サラッと言ってのけた。

 何何?と全員で耳を傾けると、三条君はニヤッと口角を上げてから、私の肩をぐいっと抱いた。

「千帆ちゃん、一緒に写真撮ろう」

「わっ、しゃ、写真?」

「うん、こうしてたらあと数秒後には紫音君来ると思うよ」

 なんて言っていたら、突然誰かにスマホのカメラを塞がれた。

 振り返ると、そこには本当にライトグレーのタキシード姿の紫音がいた。しかも、超不機嫌な様子で。

「お前を今日呼んだのはやっぱり間違いだったな」

「やだなー、お互い仕事で関わりあるんだから、仲良くしておいた方がメリットあるよ?」

「次千帆に触れたら吊るすぞ」

「結婚しても余裕ないんだねー。重すぎると引かれるよ?」

 こ、この人たちはなんですぐこうなるの……⁉︎

 高校生の時と全く変わっていない二人の間に、私は慌てて割って入る。

「もう! こんな日まで喧嘩やめて‼︎」

「千帆ちゃん、離婚したらいつでも連絡して。ロンドンから飛んでくるから」

「二度と日本に戻ってくるな」

「だから二人とも……! あっ」

 二人の仲裁をしながら、かおりんとタケゾーを置いてけぼりにしてしまってることに気づき、私はハッとして二人の方を振り返る。

 困らせてしまってるかもと思ったけれど、二人はなぜかポーッとした表情をしている。

「イ、イケメンα二人の破壊力、エグい……」

「僕、本当に今日来てよかった……。イケメンは世界を救う……」

「ちょっと! 二人とも戻ってきて! イケメンに弱すぎだよ⁉︎」

 二人の肩を順番に揺らしたけれど、帰ってきてくれない。

 こ、この二人も高校生の時から全く変わってない……。イケメンに騙されたりしないか不安すぎるよ……。

 カオスな状態に茫然としていると、カメラマンさんが遠くから私たちを呼んだ。

「ご夫婦のスナップ写真、そろそろ撮りたいと思いますー!」

「あ、ハイ! ほら紫音、行くよ!」

 三条君とバチバチになっていた紫音の腕を引っ張り、カメラマンさんがいる噴水の前まで向かう。

 挙式前に写真は沢山撮ったけれど、外でも追加で撮ってくれるみたいだ。

 紫音は写真が苦手なので、さっきも、笑顔で!と何度も注意を受けていた。

 今度は上手く笑ってくれるといいけど……。