タケゾーは男子だけどいつもメイクばっちりで美意識が高くて、前髪の真ん中分けが乱れるたびにサッと鏡を見て直しているほどだ。

 タケゾーも紫音の顔は最高だといつも崇めている感じなので、かおりんと話が合う。

 そんな彼が、なぜか顔をグッと近づけて不思議そうに私のことを見つめて来た。

「ん? なんか今日肌綺麗ね。いや、肌っていうかオーラ? 千帆、アンタなんかした?」
「え? なんかそれ今朝も紫音に言われたなあー」
「ほんとだー。タケゾーの言う通り、なんか、オーラ出てる? てか、色気?」

 二人が不思議そうに見つめてくるけれど、私はただただ困惑している。まさか、歯磨き粉で顔のくすみが取れたのかな……?

 いやいや、今日はいつも通りどころか、寝癖も何もかも適当だというのに、そんなオーラが出ているわけがない。

「ごめんよくわかんないけど、紫音待たせると怒られるからもう行くね! また明日ね!」
「はーい、バイバーイ」

 まずい、話してたらもう結構時間が経ってしまった! 私は二人に手を振って教室から出た。



 人を掻き分けて普段生徒があまり入ることがない資材室へ着いた。

 少し息を切らしながらドアを開けると、紫音が窓際に立って不機嫌そうにしている。

 そんな彼に、私はすぐに両手をパンッと合わせて謝った。

「遅れてごめん! 話って何? ていうか、なんで家じゃなくてわざわざ学校で……」
「もうお前の部屋に入れないから」
「え? どういうこと……?」

 何やら紫音はやたらと真剣な顔をしている。
 窓際に向かい合うように立ったまま、紫音は突然私の手を握った。

 その瞬間、なんだかピリッと電流が走るような感覚がした。小さい頃から何度か手を繋いだことはあったけれど、こんな感覚は初めてだ。

「電流が走ったみたいだっただろ?」
「う、うん……。何これ、静電気?」
「Ωとαが手を繋ぐと、電流が走ったみたいな感覚がする。保健の授業で習ったよな」
「確かに……。そんなことが小テストにあったような……」

 ……ん? 私はβなのに、どうして今ビリッとしたんだろう。おかしい。

 しばらく固まっていると、紫音は少し呆れた顔をして「まだ自覚なしか」とため息をつく。

「お前は、βじゃなくて変化型のΩだ」
「え……?」
「つまり、いつか俺がお前を襲う可能性が高い」