夕闇なんて程遠い、始まったばかりの色が目に染みて、手を伸ばした。風が頬を掠めて太陽がチカリと閃き、窓を飛び出した勢いがスカートをはためかせる。

ぐるり、と何度も空を切る制服の、紺が空と同じになる頃に、星がようやく囁かに遠くで光った。

無心に回り続けてしまったのに、一瞬のように思えたし、永遠のようにも思えて下界に溜め息を零す。

そしたら星がひとつ流れて、自由に動ける力が備わった。

下界は光が灯って眩くて。ビルが建ち並ぶ、道路の赤、季節ごとのイルミネーション、営みが色とりどりに存在を放つ。

溜め息を吐き出す代わりに、腕を振り上げた。

星が流れる。

ああなるほど、夜が私の色になってしまった。
なのにこんな上空で。セーラー服で見下ろしてるだけで。

案外。うん、案外──、



「 “ つまんなあい ” 、でしょお?」



やけに冷ややかな風が耳元で囁いたものだから、ギクリと思わず後ろを振り返る。



「なに、誰」



女、いや男。どっちともつかない容貌が笑みを含んで私をまっすぐ見ていた。



「えへへ」