「……とし」


「うん?」


「……さ……とし……」


 呼んでやった。


「嬉しい、遥稀」


 松尾……聖志は嬉しそうにしている。


 そうして。
 再び唇を重ね合わせる。


「好きだ、遥稀」


「私も好き、聖志」


 唇が離れる度に。
 お互い『好き』の言葉を繰り返す。



 今まで聖志に言うことができなかった『好き』という言葉。


 それが。
 今は何度も言っているから。

 なんだか、不思議……。





 私のことを『好き』と言う聖志の甘く色気を感じる声。

 その声を聞くと。
 身も心もとろけてしまう。


「遥稀、声も可愛い。
 もっと遥稀の可愛い声、聞きたい」


 聖志にそう言われ。
 ものすごく恥ずかしくなる。


 そう言われても。
 無意識のうちに出てしまっているから。

 ……出そう……と思って出しているわけでは……。