神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「コウは、賓客としてもてなすよ。まだ、彼には聞きたいことがたくさんある。勇者というのは怪しいとしても、違う世界から来たというのは真実味があるからね。もしかすると、本当に神獣様との関係もあるかもしれない。そうだとすれば……コウを手放すわけにはいかないからね」
 シャルルの言葉に、メイドは口元を引き締める。
「畏まりました。コウ様を賓客として、最大限のおもてなしをいたします」
 シャルルは、ジーパンをメイドに手渡し、凍えるような冷たい光を目に浮かべた。
「アレの使用を許可する」
 メイドがハッと小さく息をのんで頭を下げた。
「承知いたしました」
 頭を下げるメイドの前を通り過ぎ、シャルルは自室へと戻った。
 いつも執務に使う椅子とは違い、部屋に置かれている椅子は寝転ぶこともできる大ぶりのソファだ。その中央に深々と腰掛け、膝に肘をついた。
「動き出した……か」
 破滅への動きなのか、明るい未来への動きなのか。
 ――月へ橋が架かり、神獣がこの世へと姿を現すとき
 その一文から始まる文献にはいくつか種類がある。
 滅んだ国の視点で書かれた、この世は終わりを告げるというもの。
 新しく興った国の視点で書かれた、新しい世界の始まりだというもの。
 どちらにしても、神獣の加護を得た者が覇権を握り、神獣の加護を得られなかった者が亡ぶ。
 世界は再構築されるのだ。
 激しい戦闘の末に――。

★★視点戻るリョウナ★★

「すいません、あの」
「いらっしゃい。宿泊かい?」
 ギルドの前の建物に飛び込むと、予想通りそこは宿屋だった。
「いえ、泊まり客で、ディールさんはいらっしゃいますか?」
 ギルドの前の宿にディールさんとパズは泊っていると言っていた。
 日が沈むまでに街を出なければならないので、せめてお別れの挨拶をしようと。
 ……本当は、別れたくないけれど、仕方がない。
「ああ、ディールの知り合いかい」
 宿のおかみさんの言葉にほっとする。よかった。ディールの言っていた宿で合ってたんだ。
 ぷぃーぴぃーっ
 突然、草笛の音が鳴り響いた。
 もしかしてこれって?
 顔をほころばせて振り返ると、宿の階段を草笛をならしながらパズが駆け下りてきた。
「パズっ!」
 しゃがんで両手を広げると、勢いよくバスが腕の中に飛び込んできた。
「パズ、久しぶり、元気そうね」
 プー。
 草笛が1回鳴る。