神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 どうやら、めんどくさい争いのありそうな店だと。縄張りみたいなものなのか。

「任せた。どれくらいの割合で、誰の作ったポーションに効果の高い物が混じっているのか調査してくれ」
 はいと、頭を下げて執事がシャルルの元を離れると、すぐにメイドの一人がシャルルの前に出て頭を下げた。
「シャルル様、コウ様が湯あみをしている間に、持ち物をチェックいたしましたところ、やはりこの世の常識では考えられないようなものがいくつかありました。すぐに持ち物はすべて元に戻しておきましたが、洗濯をするからと衣類はこちらに」
 メイドが浩史の着ていたトレーナーとジーパンをシャルルに差し出す。下着と靴下はさすがにはばかられたためすでに洗濯に回してある。
「このように、伸び縮みする生地は初めて見ました。ですが、再現しようと思えばできないこともないかと考えられます。ですが、これをご覧ください」
 メイドがジーパンのファスナーを開けたり閉めたりしながらシャルルに見せる。
「どのような仕組みなのかわかりませんが、一瞬にしてこのように、閉じたり開いたりできるのです。細かい金属加工が施されていますが、これを再現するのは腕利きの鍛冶職人でもかなり骨が折れるかと……」
 シャルルが手にとり興味深げにファスナーを上下に動かす。
「これが再現できれば、いろいろと使い道はありそうだが……確かにこれほど細かい細工ともなると、一つ作るのにも相当時間がかかりそうで実用的ではないな。それを、たかが服にしようしているとは……」
 メイドが首を横に振った。
「たかが服ではないかもしれません。縫い目をご覧ください。これほど細かく正確に美しく整った縫い目は初めて見ました。超一流のお針子が何年もかけて丁寧に仕上げた最高峰の服なのではないでしょうか」
 シャルルがふっと小さく息を吐きだした。
「コウは最高峰の服を着れるような人物に見えたか?」
 シャルルの言葉に、メイドがうっと言葉に詰まる。
「そ、それは……」
 メイドの正直な反応にシャルルは小さく笑って返す。
「突然舞い込んできた大金と地位に我を忘れて威張り散らしていた先代のバルサ伯爵を思い出したよ」
 メイドは、小さく息を飲み込んだ。
 バルサ伯爵はあっという間に別の者と入れ替わった。シャルルの嫌った、威張り散らした身の程知らずは、ほどなくして謎の死を遂げたのだ。