神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 白っぽいシンプルなブラウスに、黒のゆったりとしたズボン。紐で結ぶようになってるな。それから、布。帯みたいに細長い布。これ、なんに使うんだ?
 バスタブの周りに置かれた衝立をずらして、出る。
 靴はさすがに用意されてなかったのでスニーカー。部屋の中でも靴の文化みたいだからな。スリッパとかもうちょっと楽な物を後で用意してもらうか。
「ああ、コウ、さっぱりしましたか?ポーションを用意させました。どうぞ」
 シャルルに、スプーンを手渡される。
 え?スプーン?
「もう、出血は止まっているようですね」
 あの獣にやられた腕を出して見せる。
「ああ、そうだな。だが、まだ痛む」
 今更ポーションは必要ないと言われないように、ちょっと大げさに顔をしかめて見せる。
「さぁ、どうぞ」
 手にしたスプーンの上に、シャルルが持っていた瓶からスプーンの上に液体を少しだけ垂らした。
 へ?瓶ごとごくごくってイメージだったけれど……?
 スプーン半分くらい?あー、うーんと。そういやぁ、日本でもそういう薬あるよな。そのたぐいか?
 スプーンを口に運ぶ。苦みと酸味と、あまりおいしいとは言えない味だ。こりゃ瓶1本渡されなくてよかったと言うべきか。
「おお!」
 さすがポーションだな。
 痛みはすぐに引き、どこに傷があったのか分からないほど、腕はきれいに元通りになった。
「これは……、言っていた通りだな」
 なぜかシャルルも驚いた顔をしている。
「何の話だ?」
 首をかしげると、シャルルが何事もなかったようにニコリと笑った。
「いえ。聖なる乙女の祈りを施した最上級ポーションの効果を見たのが初めてで驚いていたんです」
「あ?そうなのか?最上級ポーション?そうか」
 なるほど。シャルルは勇者の俺のために用意してくれたというわけか。
「お食事は、すぐにこちらに運ばせますね。それまでご自由におくつろぎください」
 シャルルが男とともに部屋を後にする。

★★シャルルサイド★★
「最上級ポーション、客引きのために使うには高すぎる。割にあうものではないな……しかも、これは薄めてこの効果だろう……」
 シャルルが、自称勇者を実験台に噂のポーションの効果を確かめたことなど、浩史は知る由もなかった。
「はい。間違えるようなこともないかと。これほどの効果の高いポーションを、粗雑に扱うとは到底考えられませんので」