神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 黒っぽい緑のマントを羽織っているが、その色は確かに向かい側にいた男の背中と同じに見える。
「そう。ちょっと面白そうな話をしているのが聞こえたものだから、仲間に入りたいと思ってね」
 ニコニコと笑うイケメン。
「ああ、いいぞ、楽しい酒がのめりゃ誰でも歓迎する」
 酔っぱらいたちが、イケメンのために体をずらして場所を作った。
「よろしく。異世界から来たという勇者さん」
 うん、どうやらこいつはいいやつだろう。
「ああ、浩史だ、コウとでも呼んでくれ」
 散々酒を飲んで、気がついたら寝ていて朝になっていた。
「冒険者になるのはあきらめたかしら?」
 朝、アイラが鉄格子の外で仁王立ちになっていた。酔っぱらいたちはすでに帰ったようで、空になった皿や酒瓶は運び出されて、ただ酒の匂いだけが牢の中に残っていた。
 あー、頭がいてぇ。完全に二日酔いだ。

 ガンガンと響く頭を抱えて下を向く。
「アイラ、この男は僕が引き取るよ」
 あ?誰だ?
「シャルル様、よろしいのですか?この男は小さな女の子を見殺しにするようなどうしようもない男ですよ?」
 アイラが様付で呼ぶ男?
 頭を押さえながら顔を上げると、緑のマントのイケメンがアイラの横に立っていた。
 向かいの牢にいて、途中から一緒に酒を飲んだ男。
 なんで、牢に入ってた男がアイラに様付で呼ばれてるんだ?
 俺を引き取るって?
「ふふふ、ちょっと、昨日面白い話を聞けたからね。本当、ここって、普通に生活してたんじゃ聞けないような話がいろいろと聞けるから大好きさ」
「だからって、勝手に何度も入られると困ります。シャルル様を牢に入れたと噂が広まっては、ギルドの立場もありますし」
「大丈夫だよ。普段は顔が見えないように気を付けてるし。おっと、コウ、僕の名はシャルル。君さえよければ僕の屋敷に招待したいのだけれど、どうかな?」
 シャルルが俺に手を差し出した。
「ここよりましなら行ってもいい」
「ぷっ。ここよりひどい屋敷なんて探す方が大変だろう?」
 ちゃんと俺を勇者だと認めてくれたシャルルだ。アイラめ。お前が様付で呼ぶシャルルが俺を認めてくれたんだぞ?
 後で、シャルルからお灸をすえてもらうからな。覚えとけよ!
 

「うおう、シャルル、お前、何者?」