神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 リュックを開いて、持ってきたポーションの瓶を取り出して渡す。
「さっきの……横領しちゃった瓶と薬葉で、私が作ったものです。何も盗んだりしていません。これも、今ちゃんと全部渡しました」
 リュックを開いて他にポーションが入っていないことを見せる。
「じゃぁ。もういいですよね?」
 くるりと背を向けて、小走りで立ち去る。
「お前が作っただと?嘘をつくな!」
 声がかかったので、立ち止まって振り返る。
 聖騎士は私が渡した瓶を落とさないように抱えて持っていることで、追いかけられないようだ。
「嘘をつくはずがありません。嘘をついても、あの水晶でばれちゃうんでしょ?じゃぁ。さようなら」
 ギルドを見ると、職員らしき人と、仲間の人が、血まみれだった人のそばに来て驚いたように状況を確認している。
 ポーションの瓶を持ち上げ、支えていた男性が説明をしているようだ。私のことを指さしている。
 知らない、知らない。ごめんなさい。
 横領して返却しなくちゃいけないものを一つ使ってしまったことは、もうどうにもなりません。
 聖騎士がポーション瓶を抱えて冒険者の人たちのところへ近づいているのが見えた。
 すいません、流石に人の命を助けたことを責められても困ります。その1本分のお金、銅貨10枚、双方の間でなんとか話し合いしてください。
 とにかく急いでその場を離れる。

★★浩史視点★★
 さぁ、街についたぞ。
 俺の勇者伝説の始まりだ。
 町の入り口には、よく小説であるような門番みたいな者は立っていない。犯罪者でも素通りじゃないか。
 王都でもないかぎり、そんなもんなのか?
 いや、待てよ?
 入り口に百葉箱みたいなものが設置されている。あの中に魔道具でも入っていて、出入りする人の犯罪歴など自動でスキャンできるとか?
 まぁいい。門番がいなかったのは、想定外だ。
 門番にギルドと神殿の場所を尋ねるつもりだったが問題ない。
「すまん、ちょっと道を尋ねたいんだが」
 道を歩いていた冒険者と思われるいで立ちの男に声をかける。
 日本にいたころには、とても怖くて声をかけられないような、スキンヘッドのガタイのいい男だ。
 目が細くて、ほほにひきつった古い傷跡が残っている。
「あ?お前、よそ者か?」
「ああ。今この町に着いたところだ。それで、ギルドがどこにあるのか教えて欲しい」