神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 例えば、日本では、万引きも7回やれば死刑みたいな。
 ……ごくりと唾を飲み込む。
 ことの重さに思わず青ざめる。
 今回だって、横領しようと思ったわけじゃない。本当にうっかりしていただけだ。でも、この世界ではそのうっかりで死刑になってしまう。
 そこに悪意がなくても。
 犯罪だと知らなくても。
 牢のような鉄格子で囲まれた中に、聖騎士の一人が入ってきて、私の腕をつかんで引っ張った。
「さぁ、町を出ていく準備をして、さっさといなくなれ、薄汚い犯罪者め」
 強い力でぐいぐいと引っ張られて、そのまま建物の外へと連れだされる。
 そして、ドンッと突き飛ばされるようにして放り出された。
 あまりにも強い力で放り出されたものだから、体制を崩して両手を地面について倒れる。
「あはははは、ざまぁないわね。リョウナ。いいえ、犯罪者さん」
 ミミリアが両手をついている私の前に仁王立ちになる。
「犯罪者?あの女は犯罪者らしいぞ」
「何をやったんだろうな」
「盗みか?詐欺か?」
 私が、聖騎士に追い出されたところを見ていた人たちが、噂を始める。
 そうか、ここが犯罪者をさばくところだというのは、街の人たちには有名な話なんだ。

「さっさと街から出ていきなっ!」
 ミミリアが足を振り上げた。
 蹴られる!と思ったものの、とっさに動いて避けることもできずに、まともに顎を蹴り上げられた。
 痛っ。
 上半身が後ろに反れ、血の味が口の中に広がる。
 少し舌をかんだようだ。
「くすくす、犯罪者なんでしょう、いい気味」
「よほどあの女性もひどい目にあったのね。恨みのこもった蹴りだわね」
 ……日本じゃ、いくら相手が犯罪者だったとしてもこれは暴行罪だ。この世界ではそうじゃないんだろうか。
 周りの人は何も言わないし、建物の前に立っている犯罪を取り締まるはずの聖騎士も全く動きはしない。
 つつーと、口の端から血が流れ落ちる。
 そのまま、ミミリアに視線も向けずにぽたりと石畳の地面に血が落ちるのを眺めた。
 顎が痛い。頭がくらくらする。ボクシングとかで顎を南下すると脳みそが揺れてなんとかって……。大丈夫かな、私。
 ポーション飲めば大丈夫かな……。
「バイバイ、二度と私の前に顔を出さないでね。あー、出したくても、もう街に入れなかったんだねぇ。追放だもんね。くすくす」