神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「あの時はありがとう。本当に行くところもなくて困っていたから助かった」
 ダーナが引き入れた男たち。人を殺すことをなんとも思ってないような人間がうろうろしている街で野宿なんてしてたらと思うとぞっとする。
 だから、素直にお礼を言ったんだけれど、ミミリアはチッと忌々しそうに舌打ちを返してきた。
「ああー、もう、腹が立つ。あの時の自分に腹が立つ。なんで、あんたなんかを店に入れてしまったのか」
 ミミリアが手で頭を掻きむしった。

 せっかく整えられていた髪がもしゃもしゃになるのも構わず、頭を掻きむしり続ける。よほどイライラとしているのだろう。
「あんたが来なきゃ、いつものように店は続いていたのよ。あんたが来なきゃハナが辞めることも……マチルダが変な知恵をつけることも……ダーナがおかしなことをすることもなかったのよ!」
「え?ダーナがおかしなこと?」
 聞き返すとミミリアがはっとして口を閉じた。
 もしかして、男たちを引き入れたことをミミリアは知っている?
「と、とにかく、私はあの時の自分に腹が立っているの。ほら、見えたわよ、ギルド。そしてその隣が聖騎士詰所」
 ミミリアが乱れた髪の毛を手で簡単に整え、もう片方の手で前方に見えてきた建物を指さした。
 石作りの頑丈そうな3階建ての建物には、朝早くからがっしりと体格のよい男性たちがしきりに出入りしている。それに混じってまだ体が出来上がっていない若い男の子たちの姿も見える。ああ、ファンタジー小説などで出てくる「冒険者ギルド」っぽい。イメージ通りの姿があった。
 だけれど、女の子の姿はほとんどない。ファンタジー小説だと、回復薬の魔法使いだとかビキニアーマーの戦士だとか女性も冒険者として多く描かれていたような気がする。
 そのまま建物のすぐ前まで二人で歩いていく。
「ありがとうミミリア。案内してくれて。ミミリアはどこに用事だったの?」
 お礼を言うと、ミミリアがにやぁと笑った。
「私が用があったのは、ここ」
 ミミリアが、ギルドの隣の建物を指す。たしか聖騎士詰所と言っていた。
 ギルドの建物が質実剛健だとすれば、聖騎士詰所の建物は絢爛豪華。装飾の施された白くて美しい柱が何本も経っていて、ちょっと神殿っぽい。
 聖騎士というくらいだから、神殿とかそっち系で間違えではないのかな?