神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 小学校のキャンプや修学旅行の時から学んでる、ちゃんと畳んでおきましょうというやつだ。いくら粗末な寝床でもぐちゃぐちゃにしたままでは後味が悪い。
 いつもは、手動ミキサーやリュックを布で覆うようにして広げている。
「リョウナ?」
 ハナがいつもと違う寝床の様子に何かを察したようだ。
「うん。これ、昨日刺されたんだ」
 ハナにどうしたのと聞かれたシャツに広がった血の染みについて説明する。
「さ、刺されたって、大丈夫なの?」
 ハナが青ざめた。
「うん、ポーションですっかり良くなってるよ」
 服をめくって傷跡すらないお腹を見せる。
 本当、ポーションってすごいよね。
 止血と抗生物質と疲れを飛ばすのと……高級なヤツじゃなくても、スパンと切っただけならくっついちゃうなんて。
「え?どんなポーション使ったの?」
 ハナが驚いて私のお腹を見た。
 どんなって。そりゃ、自分で作ったヤツで。わざわざ人の作ったポーションをもらうようなことは……。
「まぁとにかく、刺されて、それでいろいろなことに気が付いたの。私は……ここにいちゃダメなんだって」
「え?どういう……?」
「はっ。リョウナ様は、こんなところにいるような人間じゃないそうだっ!」
 いつの間に起きたのか、マチルダが近くにあった椅子を蹴った。

「私たちとは違うって言いたいのかいっ」
 首を横に振る。
「一緒。ただの1人の人間。だけど、少しだけ、皆と違う考え方ができる。そういう環境に育ったから……」
「なんだよ、結局、私らとは違う、いいとこで育った人間だって言いたいのかっ」
 マチルダさんが親指の爪を噛み始めた。
 そういえば、マチルダさんはこうしてよく自分の爪を噛むことがあり、親指の爪だけボロボロだ。
 攻撃的な感情を対象に向けられないときに自分を傷つける習癖異常の一つだと聞いたことがある。
「私の服装、少し違うと思わない?荷物も不思議な物だったでしょ?生まれた場所が違うの。それだけ。それだけなんだよ。私の方が上等な人間だなんて思ってない……でも」
 マチルダの後ろに寝ているダーナがピクリと動いたのが見えた。
 起きているのかもしれない。話を聞いているのかも。本当に寝ているのかもしれない。分からない。