神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 自分で何とかするなんて、それが自分で何にもしない人よりも立派だなんて思っていたのか。

「おい、おとなしくなったぞ、これなら殺す必要ねぇな」
「あはは、はじめからこうしてりゃいいんだ。ほら、ナイフよこせ邪魔なズボンを」
 自己責任という言葉が頭をよぎる。
 自己責任なんて無責任な言葉はない。人にはそれぞれ能力の限界があるというのに……。
 3歳の子に自己責任だから飢え死にしても自分が悪いなんて言う人間がいるだろうか。
 なぜ大人になれば無責任に自己責任だと言えるのだろう。同じことができる人ばかりじゃない。できない人はできない人が悪い?
 そんなはずがあってたまるか!
 なら助け合いなんて言葉も、福祉なんて制度だっていらないんだよっ!
「ディーーーーッル、助けて、あなたこそが正しかった!正しかったのよっ!」
 強くて人を助けられる力がある者が、弱い者を助ける。
 何も私はディールにいつも助けれるつもりなんてない。自分を殺したりなんてしない。
 私には私ができることでディールや他の人を助ければいいっ。きっとできる。
 いいえ、やってみせる。
 たとえば足踏み式のポーションづくりがマチルダやハナの助けになったように。他にも私は誰かを助ける。助けられた分を誰かを助けることで返すんだ。
「うるせーっ、やっぱり死ねや!」
 男のもつナイフが腹を貫いた。
 ぐふぅっ。
 口から血があふれ出る。
 ……ありゃぁ。これ、死ぬ?
 ちょっとだけ月の精がまた助けに来てくれないかなぁなんて思ってたけど。
「ばっ、何してるんだいっ」
 焦った声のダーナが飛び込んできた。
「こんなところで人を殺されたら困るんだよっ。それに、あんたたちも、もう街にいられなくなるよ?そっちの男は街を追い出されるのは4つ目だと言ってなかったかい?次は死刑だろ」
「やべぇ、俺は知らねぇ。俺は刺してねぇ」
 腕を押さえつけていた手が離れ、立ち去る音が聞こえる。それにつられたのか他の2人も逃げて行ったようだ。
「おい、こんなところで死ぬなっ」
 パチンと頬を叩かれる。
「あ……私の、鞄の、ポーション……」
 内臓までいってる傷が果たしてポーションでなんとかなるかどうかは知らないけれど。
 出血が止まるだけでも助かる可能性が上がるはず。