神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 店長の言葉にふぅっと小さくため息をつく。
「私たちは、稼ぎ時でもなんでもありませんから。疲れるだけ損です。ノルマを達成すればそれでいいんです。1本銅貨10枚の買い取り価格になれば、やる気が出て、よりたくさんのポーションが作れそうな気がするんだけどなぁ……ねぇ、マチルダ」
 マチルダさんに視線を向ける。
「1本銅貨10枚……」
 マチルダさんがごくりと小さく唾を飲み込んだ。
「は、わかった、いいだろう。どうせノルマにプラスして数本のことだ。いきなりたくさん作れるわけもないからな。今は確かに1本でも余分にあれば儲かるからな」
「約束ですよ。表で売る値段を元に戻すまでは1本銅貨10枚でお願いしますね」
 にこりと笑うと、店長がぷいっと顔を反らしてドスドスと不快そうな足音を立てて去って行った。
「……買い取り価格が10倍……リョウナ、あんたすごいね」
 マチルダさんが驚いた顔をしたままだ。
 ダーナはどんな顔をしているのかと見ると、悔しそうに唇を噛んでいる。
「私は自分の力で借金を返してここを出ます。助けを待ったりなんてしない」
 ダーナの顔を見る。
「はっ、そう簡単にうまくいくものかっ!」
 ダーナが私を憎々し気な目で睨む。
「簡単かどうかは知らないけれど、努力は続ける。諦めて誰かの助けを待ち続けるなんてとてもできない」
 ダーナをにらみ返すと、あっさりとダーナは目を反らし、薬研で薬葉をすりつぶすのを再開した。あくまでも、その方法を貫くつもりらしい。
 ハナもマチルダも、もう足踏み式に切り替えて作業をしているというのに。
 私は、足踏み式でノルマ分を作り終えると、薬研に切り替える。借金が増えなきゃ、それでいい。
 店長をもうけさせるようなことをする気はない。


「新入り33本、ノルマ+3本か。せっかく銅貨10枚にしてやったのに、たったの3本。ほらよっ!」
 店長がやってきて銅貨を30枚と初めての夕飯を手渡される。パン半分に、シチューのようなもの1杯だ。
「ダーナはノルマの25本+1本、ハナは今日はノルマ達成か。マチルダはずいぶん多いな。ノルマ20本に、34本もプラス……どういうことだ?」
 店長が不審な目をマチルダに向ける。
「新しい作り方を試しただけです」