神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「ダーナは助けてもらえないからここにいるの?なぜ、自分の力で助かろうと思わないの?」
 ダーナがカッとなって、再び私に手を伸ばしたのを店長が止めた。
「何が分かる。お前に何がっ!」
 分からない。
 不幸だからって他の人も不幸にしてやろうと思う気持ちも。
 誰かが助けてくれるまで何の努力もせずにいることも。
 どちらも分からない。いいや、分かりたくない。
 結婚する友達に、婚約したのは私の方が早かったのに、なんで先に結婚するんだろうって。素直に祝福の言葉を口にできない自分が嫌いだった。
 だけれど、不幸になってしまえとは思わなかった。おめでとうの言葉が苦しかった。だけれど、離婚しちゃえばいいのになんて一度も思ったことはない。
 ああ、でも。でも……。
 誰かが助けてくれるかもしれないと努力しなかったのは私も同じかもしれない。
 浩史の浮気から目を反らし、いつか誰かが私を幸せにしてくれるなんて思って関係を修復する努力も、別れを決意し新しい恋を始める努力もしなかった。
 ミミリアがけたたましく声を上げながらドアを開いた。
「次のポーション頂戴!どれだけ作ってもすぐに売れちゃうわ!早くして!……あ!店長!」
 ミミリアが店長の姿に気が付いて足を止める。

「聞いてくださいよ、店長。月の橋の噂で、ポーションを買い求める人が多いだけじゃなくて、私の作ったポーションの効き目が高いからって、もう大人気で」
 急にワントーン上げた声に切り替わった。嬉しそうな顔をしている。
「よし、値上げすればいい。しばらくは値段が上がっても買う人間は後を絶たないだろうからな。他のみんなにも伝えろ。明日からは倍の値段にするようにと。今日の客には明日から値上がりするから今日がお買い得だと言うように」
「はぁい。分かりました店長!」
 ミミリアがすぐに出て行く。
 残った店長に声をかける。
「店長、いくらあっても売れるんですよね?だったら、ノルマを超えた分の買い取り価格も上げてもらえますか?」
「は?何を言う、ちょっとディール様と顔見知りだからといって、好き勝手をさせるつもりはない」
 私の言葉に、店長はすぐに否定の言葉を発する。
「分かりました。じゃぁ、ノルマまでは頑張りますけど、時間がどれだけ余ろうがそれ以上は1本も作りません」
「馬鹿をいうな、稼ぎ時だ!1本でもたくさん作れ!」