神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 ハナ……私の真似しちゃったからなぁ。駄目だったんだよね。ごめんね。午後からでも頑張って作ったんだね。
「マチルダ、24本。ノルマプラス4本だな。新入りは、なんだ、2本しかないのか?ああ、指導したんだな」
 ニヤリと店長が笑った。
「で、ダーナは54本、こりゃまた今日はずいぶん頑張ったな」
 え?
 54本?
 昨日はノルマが達成できないとマチルダと喧嘩して……急にそんなに本数が増えるものなの?
 ダーナが私を見てニッと笑う。

 私が作って、却下した物を数に入れたんだ。……。ぐっと手を握りしめる。
 もし、本当にポーションとして駄目なものなら、昨日の苦情を店長は言うはず。来たときに苦情を言わなかったということは、あれでもよかったってことだ。
 盗られた。
 ぐっと奥歯をかみしめる。よくあることだ。日本でも。部下の成功を横取りする上司なんて。今、苦情を言っても、また証拠がないと言われるだけだ。マチルダがダーナの味方をするだろうし、言ったって無駄。
 店長が帰ると、ダーナとマチルダは昨日と同じように仕事だと出ていった。
 すっかり日は落ちて暗くなっているけれど、月が3つもあって明るい。
 ミキサーの作業を続ける。
 しばらくして、寝ていたハナが起きた。
「あ……。えーっと、ちょっと出かけてきます」
 ハナは、自分の寝床に置いてあった荷物から籠を一つ持って、ドアを開いて出て行った。
 あれ?ドアには鍵がかかっていたんじゃないのかな?こんな夜中に、何しにどこへ行くんだろうか。昨日もいなかった。
 でも、まぁちょうどいい。誰にも見られない方がいい。
 出来上がったミキサーもどきに薬葉を入れる。
 ふたをしめ、蓋の上に出ている棒に紐を巻き付ける。
 弓切式火おこし。そう、火を起こすときに棒を高速回転させるあの仕組み。弓のようになったものの紐を棒に巻き付け、それを動かして棒を回すのだ。
 1分ほど棒を回す。刃がついているため、はじめは不安定でうまく回せなかったけれど、次第にコツをつかむ。
 ふたを開けて中を見ると。
「うわー、失敗か……」
 全然葉っぱは葉っぱのままだ。
 半日かけてせっかく作ったのになぁ……。とうなだれたところで、はっと思い出す。
「そういえばミキサーって少し水をいれないと駄目な食材もあったよね」