神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「ま、魔法みたい……」
 じゃなくて、魔法なのかな。この世界、魔法があるんだっけ?ポーションもすごいし。
 屋根の途切れた場所から、月明かりに照らされてキラキラとした青年が下りてきた。
「月の……精?」
 思わず口走りハッとする。
 魔法があるからといって、妖精の類もいるとは限らない。
 けれど、それほど、神秘的で美しい青年がそこにはいた。
 ふわりと音もたてずにゆっくりと空から……まるで月の光に紡がれて姿を現したように地に降り立った。
 薄い金色の髪。美しい濃い金の瞳。すけそうな白い肌に、白いローブのような服を身にまとっている。
 整った顔に、いつかどこかで見た天使の絵を思い出した。ううん、天使というよりは神々しささえ感じる。
「大丈夫?リョウナ?」
 え?私の名前をなぜ知っているの?という気持ちと。名前を知っているなんてやっぱり月の精か月の神さまなんじゃないかという思いとで、うまく返事を返すことができなかった。
「はい、荷物」
 月の精(仮名)が、リュックを差し出す。
「ありがとうございます」
 受け取りすぐにぎゅっと抱きしめる。
 よかった。戻ってきた。
「よかった。お礼ができて僕は嬉しいよ」
「お礼?あの、私の方こそ何かお礼をしなくちゃ、でも、あいにくとその」
 こちらの世界のことがまだ全然分からないし、こちらの世界のお金もない。どうしよう。

「何を言ってるのリョウナ、僕がお礼したんだから、お礼のお礼なんていらないよ?」
 月の精は、神々しい姿で年齢的には20代半ばに見える。けれど、ずいぶんと話かたは砕けているし、それに……どうにも、なんだか知り合いに話かけているような感じ。
 と、キラキラしている月の精の顔をじーっと眺める。
 あれ?誰かに、似てる。
 そんな馬鹿な。この世界で会った人なんて少ないのに。
「あ、パズ……」
 髪の色、肌の色、瞳の色……それから線の細い感じとか、パズに似ているんだ。
 パズの名前を口にしたとたんに、月の精が両手を広げて嬉しそうに私に抱き着いた。
「え、あ、の」
「パズのこと覚えててくれた」
 いや、そりゃ半日前に会ってたんだから覚えてるけれど。月の精……のように綺麗なこの人は、パズとどういう関係なの?