「悪いねぇ、私もいつまでもここにいたくないからね。よくわからない物だけど、珍しいから高く売れそうだよ」
マチルダの手にはスマホ。
「駄目!駄目!返して!返して!」
私の物だから返してほしいのはあたり前だけど、それだけじゃない。
この世界にないもの。私が、日本人だという……その証。
日本に帰れるか帰れないかは分からないけれど、それでも今までの私を全部なかったことにも捨てることもできないっ。
浩史は、この世界に来て嬉しそうで帰るつもりなんてなくて、もしかすると日本のことなんてもうすっかり振り切っているかもしれない。
でも、私は、日本に帰りたいし、忘れられないし、日本のことを思い出せる唯一の荷物を手放したくなんてないっ!
「大丈夫だよ、売った金が余ったらあんたの借金もちゃんと返してやるからさ」
全然大丈夫じゃないっ!
「返して!」
人生で初めてだ。
人につかみかかるなんて。
ダーナにつかみかかる。
「人が親切にっ、取り分を分けてやるって言ってんのにっ!」
ぐふっ。
ダーナにお腹を蹴られた。
◆
「返してください、取り分って、それはもともと私のものです」
「誰も信じないわよ。じゃぁ、私はこれ、もらってくわね」
ミミリアがダーナに手を振る。
「待って、持って行かないで、私のよ、返して」
ミミリアの腰に縋り付いて止める。
「もうっ、うっとおしいわねっ!」
ミミリアが近くにあった木の皿をつかみ私の額を殴った。
「これ以上痛い目に会いたくなければおとなしくしてなさいよっ」
一瞬目の前がちかちかっとして、視界がおぼつかない。
ちかちかが収まると、ミミリアをにらみ上げる。
「返してください」
「うるさいっ」
ドンッと今度は肩に衝撃が走る。
皿で殴られた。それから横からダーナのけりが入る。
痛い……。
痛みに、ミミリアの腰から手が離れ、地面に這いつくばった。
「返して、返してっ!」
涙が落ちる。返して、返して!
声が枯れそうなほど同じ言葉を口にする。
「眠れ」
ふと、静かな声が頭上から降り注いだ。
すると、まるで糸が切れたように、3人がぱたぱたと倒れる。
「有るべき者の手に帰れ」
再び静かだけれどしっかりした、何もかも包み込むような不思議な声が頭上から降り注ぐ。
すると、すぐに散らばっていたリュックの中身がリュックに戻っていく。
マチルダの手にはスマホ。
「駄目!駄目!返して!返して!」
私の物だから返してほしいのはあたり前だけど、それだけじゃない。
この世界にないもの。私が、日本人だという……その証。
日本に帰れるか帰れないかは分からないけれど、それでも今までの私を全部なかったことにも捨てることもできないっ。
浩史は、この世界に来て嬉しそうで帰るつもりなんてなくて、もしかすると日本のことなんてもうすっかり振り切っているかもしれない。
でも、私は、日本に帰りたいし、忘れられないし、日本のことを思い出せる唯一の荷物を手放したくなんてないっ!
「大丈夫だよ、売った金が余ったらあんたの借金もちゃんと返してやるからさ」
全然大丈夫じゃないっ!
「返して!」
人生で初めてだ。
人につかみかかるなんて。
ダーナにつかみかかる。
「人が親切にっ、取り分を分けてやるって言ってんのにっ!」
ぐふっ。
ダーナにお腹を蹴られた。
◆
「返してください、取り分って、それはもともと私のものです」
「誰も信じないわよ。じゃぁ、私はこれ、もらってくわね」
ミミリアがダーナに手を振る。
「待って、持って行かないで、私のよ、返して」
ミミリアの腰に縋り付いて止める。
「もうっ、うっとおしいわねっ!」
ミミリアが近くにあった木の皿をつかみ私の額を殴った。
「これ以上痛い目に会いたくなければおとなしくしてなさいよっ」
一瞬目の前がちかちかっとして、視界がおぼつかない。
ちかちかが収まると、ミミリアをにらみ上げる。
「返してください」
「うるさいっ」
ドンッと今度は肩に衝撃が走る。
皿で殴られた。それから横からダーナのけりが入る。
痛い……。
痛みに、ミミリアの腰から手が離れ、地面に這いつくばった。
「返して、返してっ!」
涙が落ちる。返して、返して!
声が枯れそうなほど同じ言葉を口にする。
「眠れ」
ふと、静かな声が頭上から降り注いだ。
すると、まるで糸が切れたように、3人がぱたぱたと倒れる。
「有るべき者の手に帰れ」
再び静かだけれどしっかりした、何もかも包み込むような不思議な声が頭上から降り注ぐ。
すると、すぐに散らばっていたリュックの中身がリュックに戻っていく。


