神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 女性は、剣を背中に戻して穴を掘っていた。
 ひゅんっ。
 まるでピストルんの弾丸のようなスピードで石が飛んできた。
「消えろ」
 くそっ、くそっ。
 もう土下座しようと絶対に許さない。
「あ、まだ息が……待ってろ、今ポーションを」
 急に優しい声を出した。
 あ?ポーションを持ってるのかよ。なんで俺にはくれなかったんだ。
 くそ、マジで腹立つな。ちょっと美人で強いからって、それがどうした。
 俺は勇者だ。異世界から選ばれて召喚されたんだぞ?
 今はまだチート能力に覚醒してないけれど、スキルチェックをして、神殿で祝福を受けて……ちょっとレベルを上げれば。すぐに強くなる。
 誰もが俺に憧れ、パーティーに入りたいと言うようになる。
 怒りに満ちて歩き続けること2時間。ついに街が見えてきた。

☆視点もどる☆
 ガサリと物音がして目が覚めた。
「えっと、ここ……」
 寝起きのぼんやりした頭で景色を眺める。
 そうだ、私異世界に。辺りはまだ暗い。でも、月が3つあるからなのか、月明かりでもずいぶんと周りの様子が見える。
「なんだ、これ。見たことがない」
「高そうな品だね、売れば借金が返せるかも」
「何でこんなにいいもの持ってるのに働きたいなんて」
「表で働くつもりだったんだよ、それで私が店長に裏に回させた」
 ひそひそ話が聞こえてきた。
 ん?あれ?
 枕にしていたリュックがない。
 声のしたほうに目を向けると、3人の人影が。
 ミミリアと、ダーナとマチルダ。
「返して!」
 私のリュックを手に、中身を出している。
「何を返すっていうんだい?これは、私の物だよ」
 ダーナがリュックを取り返そうと伸ばした私の手から、ひょいっとリュックを持ち上げて手の届かない場所に移動させた。
「私のです、返してくださいっ!」
「あんたのもんって証拠がどこにある?事実、今持っているのは私だろう?」
 ダーナの言葉に、ミミリアが頷いた。
「そうだね、持ち主はダーナだね。私が証人になるわよ。警邏にでも訴える?くすくす」
 え?
「何を言っているの?リュックを持って移動してきたの、見てたでしょう?」
「さぁねぇ、知らないわ。くすくす。それにしても、この鏡すごいわねぇ。こんなに美しくはっきり映る鏡なんて初めて見たわ」
「それも、私のっ!」
 ミミリアが持っているのは化粧ポーチに入っていた手鏡だ。