神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「食事抜きだと聞きました」
「くくくっ。食事抜きね。まぁ、確かに食事抜きだろうよ」
 瓶に蓋をしていたつり目女性が立ちあがって私の目の前に来る。
 同じ年くらいだろう。けれど、ずいぶん疲れた様子で、目の下のクマがひどい。ろくに食事もとれていないのかずいぶんとやせ細っている。
「私は、ここで3年、ノルマは20本。最近やっとノルマをこなせるようになってきた。その意味が分かるかい?」
「え?もしかして、……30本を達成するのってとても難しいんですか?」
 何てことだろう。全然分からなくて、仕事が欲しかったから疑いもしなかった。
「うはははははっ、難しいんですか、だって。あははは、やって見ればわかる、やってみな。葉っぱを液体にするんだよ。葡萄から汁を絞るわけじゃないんだよ」
「しかし、ノルマ30本ね、店長もこの子を使いつぶす気満々だね。なまじかわいい顔してるからかわいそうに」
 使いつぶす?
「あ、もしその、無理そうなら、皆さまの邪魔にならないうちにやめますから」
 使い物にならなきゃクビになるだろう。だけれど迷惑をかけるわけにはいかない。無理そうなら早めに自分から辞めて新しい仕事を探そうと、日本にいるときと同じように考えて口にした。
「あはははっ、馬鹿か!勝手に辞められるわけないだろ!」
 え?

「ノルマが達成できない日の分は借金になるんだよ。宿代と食事代は借金」
 借金?
「そうさ、1本足りなければ銅貨10枚、2本足りなければ銅貨20枚……借金はどんどん膨らんでいく」
 は?
「ノルマを超えた分の買い取りは1本銅貨1枚だと聞きました。足りない分は銅貨10枚?ノルマが達成できるようになっても、借金を返すの大変じゃないですか」
 もし、10本しか作れなかったら、銅貨200枚も借金になってしまう。1日でそれだけの借金。
 返そうと思ったら、ノルマに加えて200本も作らなければいけないということだ。
「別の方法で稼ぐように言われるだけだ。借金まみれになったころに声がかかるさ……」
 別の方法?
「そっちで稼げなくなりゃ追い出される。リョウナといったか、あんたの人生も終わり」
 店長にお尻を撫でられたことを思い出す。
 別の方法って……体を売るとかそっち系?
 ぶるると体が震える。
 借金がかさむ前に、やめなきゃ。今すぐ出て行く?