神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 ぽんぽんと、ディールさんがパズ君の足をたたいた。
 ぷぅーっと草笛が響く。
 穏やかな日差しを浴びながら、二人と会話して道を進むと、一人で歩いていた時とは違って、時間がたつのがあっという間だった。
 森の木々の影が少し長くなってきたころ、街が見えてきた。
 石と木でできた建物がいくつも並んでいるのが見える。華やかな色合いはない。石や木の色がそのままの建物だ。
 平屋か2階建てがほとんどで、塔のような突き出た建物がいくつか見える程度だ。神殿だとか何か特別な建物だろうか。
 特に塀に囲まれていて出入り口に門番が立っているような様子はない。
 あれ?大丈夫なのかな?獣とか……いや、モンスターとかが入ってこないようにしてないのかな?
「リョウナは、仕事と住むところを探しているって言ったな?」
「はいっ」
「住み込みで働ける場所っていうと、ポーション屋だろうな」
 ポーション屋?
「女が多い職場だが、平気ならしばらくポーション屋で働いてゆっくり仕事を探すのもいいかと思うが」
 女が多い職場か。確かに派閥だとかお局とかいろいろめんどくさいことはあるかもしれないけれど、それなりに社会人経験も長いし。もっとめんどくさいパワハラ上司やらセクハラ取引先に比べれば、女同士のいさかいなんてかわいいものだよ。
「街に入って、2本目の道を左に曲がってしばらく行くと、ポーション街がある。1つ目2つ目の店は、高級ポーションを扱う店で人は雇ってない」
 ごくりと唾を飲み込む。
 高級ポーションっていうと、あの、一瞬で傷を治しちゃった魔法みたいな薬のことだよね。
 あんなに不思議ですごい者が、普通に街の店で売ってるんだ。

「3つ目4つ目の店はそこそこの品質。ポーションづくりの確かな腕が無ければ雇ってもらえないから、別の店で修行してから移ってくる者もいるようだぞ。それを目指すのもいいかもしれないな」
「あの、ポーションとか作れないですよ?魔法とか分からないし……」
「魔法?そりゃ高級ポーションは神殿で聖女の祈りを受けた特別なものだが、効果の小さなポーションは誰でも作れるぞ?」
「は?」
 誰でも?
 ポーションって、錬金術スキルとか、なんかそういうのを持っていないと作れないとかじゃなく?
「薬葉を汁にすれば、それがポーションだ」
 ……青汁じゃん。