神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 背の高い男が、リョウナの着ていた服を広げてどす黒く残った血と、ウルビアの歯に食いちぎられた穴を見た。
「とてもこれでは生きていられないだろう」
 私は一言も死んだなんて言ってない。
「それを持って行けばいい。命じられたのは、リョウナを探すことだろう?効果の高いポーションを作れるリョウナを探した結果だと、それを持って行って見せればいい。もし、真実の水晶で問われたって、リョウナを探して話を聞いたらこれを渡されたと言えば、嘘をついたことにはならないだろう?」
 背の低い男がハッとする。
「だが、リョウナの服だと誰が証明するんだっ」
「リョウナは、罪人さ。聖騎士詰所で数日前に有罪判決を受けたばかり。つまり、着ていた服を、他ならぬ聖騎士詰所の人間が覚えているはずだよ」
 背の高い男が、リョウナの服を雑に丸めて鞄の中に詰め込んだ。
「……帰るぞ。報告に戻ろう。……探していたリョウナは死んだ」
 背の高い男が背の低い男の背中をたたいた。
「……快く、リョウナがその道具をお前に譲ったと言っていたが……」
 立ち去り際、背の高い男が振り返った。
 もしかして、それを奪うためにお前が殺したんじゃないかと、そう男の目が疑いの目を私に向けている。
 ああいいさ。それでいい。
 きっとブルーノにいたころの私を知っている人間に話を聞けば、疑いを確証だと思い込むような証言が出てくるだろうよ。
 リョウナは死んだ。
 だから、これ以上探すのをやめることだ。
 リョウナを利用させやしないさ。たとえ、私の言葉がでたらめだとばれようと……時間稼ぎにはなったはずだよ。