神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 背の高い男が、背の低い男の背をぽんっと叩いた。
「もとはと言えば、お前が彼女にけがを負わせて話をややこしくしたのだろう」
 悔しそうな顔をして背の低い男が銀貨を6枚ほど差し出した。
「しけてるねぇ。まぁいいさ。教えてやるよ。詐欺のぬれぎぬ着せられても嫌だからね。ポーションの秘密はこの道具だ。リョウナが作ったからじゃない、この道具で作ったから、特別なものが出来上がるのさ」
 両腕に抱えて、ポンポンとリョウナにもらった道具を軽く叩いて見せる。
「なるほど。じゃぁ、それを、貰えるか?」
「は?何言ってんだい。どうして渡さないといけないんだい!」
 なんだか、美味しい展開になってきたね。にやけそうになるのを我慢して怒った表情を浮かべる。
「代金は、支払っただろ!お前には過ぎた大金を!」
 何が、私には過ぎた大金だ!
「ふざけんな!あれは情報料だ、これさえあれば、これからいくらだって金が手に入るんだ。あんなはした金で渡せるわけないだろう!」
 背の低い男が私の持つ道具に手を伸ばす。
 奪われる物かと、必死に抵抗して見せる。いい感じだね。
 道具は引っ張り合いになった。
「ああっ!」
 大げさに驚いた調子で、手が滑ったというか、奪われてしまった風をよそおって、道具をひっくり返す。
 中に残っていたポーションが背の低い男の足元に降りかかった。
「は」
 私の手から道具を奪って背の低い男は満足げな表情だ。
「なんてことを、なんてことをしたんだいっ!」
 その満足げな顔がいつまで続くかな。
 慌ててポーションがこぼれた地面にはいつくばって、ポーションをかき集めるしぐさをする。
 もちろん、地面にすぐに吸い込まれ、ポーションを手にすることなどできない。だが、必死な様子を見せる。
「まだ、そこに残ってるか?」
 背の低い男の手にある道具に手をかけて中を覗き込む。
「なんだよ、また作るだけだろう。こぼれた分くらいは、あとで届けてやるよ」
 すっかり自分たちのものだという言葉にイラつきながら、男を責め立てるようにドンっと肩をついた。

「また作る?何を言っているんだい。その中に残っていたポーションこそが、その道具の”かなめ”なのに……。少し残しておいて、薬葉を継ぎ足して作ることで、特別なポーションができるんだ……それがなくなってしまったら……」