神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 振り払われた私は、ちょっと大げさによろめいて、地面に手をついた。
「あーあぁ、どうしてくれるんだい、せっかく教えてやろうと思ったけれど、やめだ、やめ。帰っとくれ」
 しっしと追いやる仕草をしながら、地面についた手から、血が流れているのを見せる。
「ケガしちまったじゃないか……あーあ」
 ニタリと笑って、リョウナがくれたポーションを作る道具を取り出して指を入れる。
 中に残っていたポーションは、瓶にうつして村長に保管して貰うことになったけれど、ポーションの瓶の数が十分ではなく、まだこの道具の中に少し残っているのだ。
 けがをした手のひらを男たちに見せながら、ぺろりと指につけたポーションをなめる。
 見る間にけがはふさがり治ってしまった。
「なっ!」
 男たちが驚いた顔を見せる。
 そりゃそうさね。初級ポーションならこれくらいの傷、血は止めることができるだろう。
 だが、そこに傷があったことさえ分からないほど綺麗に一瞬で治すようなことはできない。
「今舐めたのは、まさかポーションか?」
 背の低い男が唾を飛ばしながら聞いて来た。
 まったく、本当に権力を振りかざすのが好きな人間っていうのは頭にくる。
「そりゃ、あんたに怪我をさせられて痛いからね。ああ、痛かった。あんたに怪我をさせられちまったからね」
 謝りもしないことを責めるように2度繰り返してやる。

「あんなかすり傷で、大げさなっ」
 カッとなった男を、背の高い方の男が止めた。
「待て。それより、今のポーションのことを教えてくれないか?」
 さてと。こっちの男はどこまで賢いかねぇ?
 さっと、血の跡は残っているが傷あと一つ残っていない手を男に差し出す。
「金貨1枚」
「は?ふざけるなよ!さっさと教えろ!」
 背の低い男が、またカッとして怒鳴っているのを、背の高い男が手で静止する。
「何言ってんだい?さっき私が教えてやろうとしたのに、断った挙句、乱暴して怪我を負わせたのはどこのどいつだい?なんでそんな奴に、親切にただで教えてやる必要がある?教えてもらいたいなら、怪我の治療費としてポーション代を支払うことくらい当たり前じゃないか?……いや、謝罪もない相手に話すことは一つもないね」
 くるりと背を向けて、部屋の中に戻ろうとすると、腕をつかまれた。