神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

「はぁん?お前たちこそ誰だ。私に用があるっていうから出てきてやったのに」
「失礼な口を利くな、俺たちは」
 背の低い男が私の挑発的な口調が気に入らなかったのかカッとなった。
「ま、待て、待て」
 背の高い男が背の低い男の肩をつかんで止めた。
 馬鹿な奴だな。聖騎士だったとしても、使えない下っ端ってとこか。変装しているというのに、自分たちは偉い人間だと主張するつもりとか。
「ちっ」
 思わず舌打ちしてしまう。
 何様だよ。
 人の罪をあばき、街を追放する権限を持つ聖騎士。
 だが、皆知っている。
 金さえ積めば、罪を見逃してもらえることも。
 気に入らなければ、罪と言えないような小さな罪……例えばつまみ食いをしたというそれだけのことで、店のものを横領した罪として追放してしまうことも。

 真実を見通す水晶の前に立たされてしまえばおしまい。立たされなければ罪も罪として記録されることはないのだ。
 聖騎士に逆らわないようにと、人々は過ごしている。
 何も、聖騎士が立派で素晴らしい仕事をしていて尊敬しているわけではない。
 権力をかさに来たどうしようもない腐った人間どもの集まりだと知っているからだ。
「すまない、少し話をさせてくれないか。町の人にブルーノから来た女を知らないかと聞いたら、君を紹介された」
 思わず唾を飲み込むのをぐっとこらえる。動揺を見せてはだめだ。
「ああ、ブルーノから2日前に来たよ。ポーション屋で働いていたけど、クビになった上に、街を追放になったからね」
 ニヤリと笑って答えてやる。
「おい、2日目ってこともポーション屋ってことも、街を追放って話も全部合ってるぞ」
 背の低い男が小さな声で隣の男に耳打ちする。
 聞こえてるよ馬鹿が。
 そうか。やはり、そうか。
 理由は分からない。
 だが、リョウナを探していることは間違いなさそうだ。
 ……理由は、分からないが、きっとポーションに関することだ。
 あの、以上に効果の高いポーション。
 聖なる乙女の祈りをほどこしたポーションを使ったことはないが噂に聞いたことはある。
 祈りの長さで効果は変わると言うが、一口で大けがを治してしまうようなもの乙女が1年間祈りをささげたポーションでもそれほどの効果があるのか。
 王族のために作られるポーションはそういう効果もあると聞いたことはあるけれど。