神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 ディールさんの背中の力がふっと抜けたのが分かる。
「誰かを、助けるための力……?」
「そう、うーんと、私を、助けてくれたでしょう?ウルビアから守ってくれたでしょう?」
 ディールの腕の力も緩み、ずっと抱き上げられていたけれど、やっと地面に両足が付いた。
 体を離したディールが、私の腕をつかんで顔を覗き込む。
 じーっと、ディールが私の顔を覗き込んだまま、固まっている。
 ああ、こうしてみると、ディールってイケメンよねぇ。
 月の精のような、キラキラ系白馬の王子様系イケメンとは違って、戦士系イケメン。
 彫が深くて、こってりした顔なのに、目鼻立ちがとっても整っているから、くどさは感じない。顎は割れてないけれど、細すぎないし。
 って、何をじっくり観察してるんだろう。
「あのね、えーっと」
 急に見つめ合ってる状態だということに気が付いて、恥ずかしくなって慌てて口を開く。

「悪い人はきっと、力は攻めるために使うと思うの。ディールは、力を守るために使えば間違えないと思うんだ。どれだけ強くなっても、守るときにだけ力を使っていれば……ね?」
 まぁ、すんごき悪の女王みたいな人に「わらわを守るのじゃ」とか利用されちゃう可能性がないわけじゃないけれど。
「ああ、分かった。俺は……」
 ディールさんがつきものが落ちたようなさわやかな笑顔を浮かべた。
「リョウナを守る」
 は、い?
「俺は、リョウナを何があっても守ってみせる」
 いや、ちょっと、おかしな結論になってる気が……。
「そ、そうじゃなくて、パズ君とか、それから他の、えっと」
「俺は、リョウナのために、もっと強くなる。リョウナ……」
 ぐいっとディールの顔が近づいた。30センチも距離がないよっ。
「俺の……」
 ちょっと、ちょっと、待って!
 ディールの顔が、近づいて、これって、まるで。
 キスされるみたいな……。
「……!」
 唇に、ディールの唇が触れた。
 え……っと、あれ?
 なんで、そんなことに?
「俺は、これからリョウナのために生きる」
 混乱して、思考放棄して、ぼんやりして、すぐに離れたディールの顔を眺める。
 なんで、私、ディールとキスなんて……。
 あの時の……人命救助のための、ポーションの口移しとは違うよね。
 違うよね、これって……あの、えっと……。ディール、どういう意味なの?