神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 日本のフィクションに出てくる悪の組織だって、力をもともと持っている人だったりするもんね。人よりすごい力があると、人はおかしくなることもある。
「お、俺はそんなことは……」
「うん、でも、ディールって、誰かに騙されて力を利用されちゃうかもしれないね」
 ディールの背中に緊張が走った。
「くすくす、ごめん、嘘、嘘。ディールなら大丈夫だよ。もしね、悪い人に利用されそうになったら、私が叱ってあげるから」
 ディールが、急に立ち止まった。
 うわわわっ、あまりのスピードでの急ブレーキに、ディールの背中からスポーンって飛び出しちゃったよ。
 ひゃー、地面に激突しちゃうって!

「リョウナっ」
 すぐにディールが飛び出して、私が飛んで行った先に立って、両手で受け止めてくれた。
 ぎゅうっと、そのまま、強い力で抱きしめられる。
「俺は、怪物だと言われるほどの力が、怖い。怒りに我を忘れて誰かを傷つけるんじゃないかと……それでも、もっと強くなりたいと、もっともっと強くなりたい、力を手に入れたいと心が燃えるように熱くなって、苦しくて……」
 苦しいんだね……。そう、きっとずっと苦しんでたんだ。
 誰が、ディールに怪物なんて言ったんだろう。
「ヒーローにも、力が必要なんだよ」
 すっと両腕を伸ばして、ディールの背中に回した。背負われていた時も思ったけれど、ディールの体はとても鍛えられている。手で触れると、背中にもしっかりと分厚い筋肉がついている。
 なんか鎧だとかは、私が背負われて不快そうだとわざわざはずしてくれたんだよね。本当、親切だし、気遣いもしてくれるいい人だよ。
 それに、パズ君はディールさんのこと大好きみたいだし。子供の顔を見ればわかるよ。子供はひどい扱いをされれば表情が曇るもの。パズ君の表情は明るかった。しゃべれなくても、それでも、ディールさんと楽しそうに「会話」できてたもの。
 ぽんぽんと、小さくディールの背中を叩く。子供をあやすみたいな動きになってるなぁとは思ったけれど。
 私よりずっと大きくて強いディールが、子供みたいに感じて。
「悪い人が、もしすごい力を持っていて、世界征服しようとか、人を皆殺しにしようとか、ひどいこと始めた時に、それを助ける人にも力が必要なんだよ。誰かを助けるために……ディールはもっともっと強くなっていいんだよ」