神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 怪物じみた力?怪力とか?んー、あ、チートとかいう感じの能力のことかな?
「素敵ね」
 再びディールの体が硬くなった。
 それでも、スピードを落とさずに私を背負ったまま走っているんだから、もう十分怪物じみていると思ったのは内緒だけど。
「怪物だぞ?どこが素敵なんだ?」

「ディールがもっと強くなるってことでしょう?パズや私や、それから町の人、いっぱい助けてるディールがもっと強かったら、もっと助けられる人が増えるかもしれないのよね。素敵なことじゃない?……ああでも、ディールの体は一つだし、今でも十分強くてみんな助けてるんだから、うーん、どうせ怪物になるなら、スライム?なんかそういうモンスターみたいに分裂できた方が便利なのかな?そうすれば、あっちこっちで助けてって狼煙が上がっても助けられるし?」
 この世界にスライムなんて生き物が実際いるのかは分からないし、いたとしても分裂するかもわからないけれど。
 ディールの背中が小刻みに揺れている。
「くくくっ。俺が、分裂して増える?この俺が?」
 笑ってる?
 おかしなこと言ったかな?いや、おかしいか。人間が分裂して増えるなんて。日本じゃ、アニメや漫画……どころか忍者の分身の術みたいな感じで、ありきたりな発想ではあるんだけどなぁ。
「俺は……もっと、感情のままに、力を求めてもいいのか……?」
 感情のまま?
「強くなりたいって、誰でも思う普通のことじゃない?」
 もちろん、それは肉体的な話ばかりではなく、私は心が強くなりたいって思うし。
 あ、いや。普通のことではないのかな。強くなりたいと思う気持ちがある人って強い。日々の生活に追われて、小さいころに純粋な気持ちで夢見た、ヒーローになりたいとか警察官になりたいとかそういう気持ちは失われていく。
「ディールが、強くなりたいと思うなら、強くなれるように頑張ればいいと思うけれど……」
 年齢的に躊躇するのかな?何を恐れているんだろう。
 恐れ?
 ああ、そうだ。なんだか、ディールは強くなることを恐れているようにも思える。
「だが……過ぎたる力は、災いを産む……ものだ……と」
 なるほど。
「確かに!すごく強い人とかいたら、なんか戦争したら勝てそうだし、世界征服とかできちゃいそうだし……」