神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 男の人の後ろからおずおずとさっきの男の子が顔を出した。
 ああ、よかった、無事だったんだ。
 ほっとして表情を緩めると、男の子がにこっと小さくほほ笑んだ。
 うわぁ、かわいい。
「この子の命の恩人だからな」
 ん?
 この子?男の人は、顔はさほどくどい系ではないけれど、体はゴリマッチョで、暑苦しいのが服の上からもわかる。
 服というか、皮でできた胸当てとか肩当とか……鎧?なの?と、マントも身に着けている。体に割と密着したズボンにひざあてと、脛カードなのかな?金属のものがついてる。
 そして、腰には立派な西洋剣が。
 冒険者という単語が頭に浮かんだ。
 やっぱりこの世界は、ギルドがあって、冒険者がいて、魔法も使える世界なの?そして、モンスターがいる……。
 と、違う、今はそれよりも。
 男の子は儚くて消えそうな粉雪のようなイメージの可愛さがある。一方男の人は夏の太陽のような力強さがあって、全然似てない。似てないけれど、この子と呼んだってことは。
「親子?」
「は?いや、待ってくれ、俺とこの子が親子?親子に見えるか?」
 見えないけど。
 なんで、そんなびっくりした顔して問いかけるの?
「あ、いや、でも、そうか。俺も子供がいてもおかしくない年齢だし、親子だと言われても……そうか、なんか、まだ独身なのに子持ちと間違えられるのって、かなりショックかもな……」
「あ、ごめんなさい、えーっと……親子じゃなきゃ兄弟?」
 慌てて謝る。
 気持ちは痛いほどわかる。私だって、もう小学生の子供がいたって不思議じゃない年齢なんだもんなぁ……。かといって、独身だし。子供は何歳?って言われたりしたらショックだ。
「いや、ちょっと訳あって面倒見てる。血のつながりはない、あ、誘拐とか人買いじゃないからな?俺はディール、この子はパズ」
 誘拐?人買い?
 ぞくりと背筋が寒くなる。
 そういうのが普通にある世界ってことだ。
 でも、だったら余計に……。
「面倒見てるっていうことは、保護者ってことでいいですか?」
「あ?ああ」
「だったら、ちゃんと保護者として責任をもって見てあげてくださいっ!今、ああいう獣がいることも、誘拐される危険があることも、全部知ってるんですよね?知っていて、なぜ目を離したんですか?」
 いきなり強い口調で話し始めた私に、男の人……ディールさんが腰を引いた。