神獣の国への召喚 ~無自覚聖女は神獣を虜にする~

 何十というウルビアが次々に森から出てくる。そして、気が付けば、私はウルビアの群れに囲まれるようにして逃げ場を立たれていた。
 急いでリーダーらしき、初めに森から出てきたウルビアと視線を外さず、足元に置いた手動ミキサーの位置を確認する。
 傷を負っても、ポーションがあれば……。
 ポーションで治しながら逃げる。なんとか森の木に登る。ウルビアは木に登れない。
 どうしよう。もし、私が木の上に逃げられたとして、ウルビアたちは、町に向かって歩いてるみんなの方へ行ったりしないだろうか。もう、みんな町についただろうか。
 素早くしゃがみこみ手動ミキサーを抱えたところで、ボスが動いた。私に向かって駆けてくる。それを合図に、四方から何匹ものウルビアが駆け寄ってきた。
 ああ、甘かった。逃げる隙なんて与えてくれないんだ!
 肩と、わき腹に痛みが走る。
 とっさにミキサーのふたを開け、手を突っ込んでポーションを指で舐めた。
 痛みは一瞬引いたものの、ずっと食いつかれているためすぐに痛みが戻る。
 ぐふっ。
 ふくらはぎにも別のウルビアがかみついて来た。

 痛い、痛い、痛い。
 ポーションを指に付けては舐める。
 ダメだ。痛い。痛みで意識が飛びそう。
 このまま、もう、意識を飛ばした方が絶対に楽だ。
 ボロボロと涙が出てきた。
 だけど、私という獲物を倒したあとは、ダーナたち町に向かった人が狙われるかもしれない。
 もうちょっと時間を稼がないと……。
 痛いよ。痛いよ。痛いよ……。
 もう、駄目……ねぇ、私、頑張ったよね……、ごめんね、もう、これ以上は無理だ……。
「リョウナァァァァーーーーッ!」
 意識が薄れている。
 私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
 白い光に包まれた人が空から舞い降りて……。
 天使?
 ううん、違う、なんか……ああ、ディール……。
 そう、この世界では、会いたい人の姿をしてお迎えが来るのかな。
 ふふ、ふ……。

 目を開くと、キラキラと白い光を飛ばしたディールの顔が映った。
 キラキラ、ああ、そう。月の光のようだ。……違う。
「泣かないで」
 キラキラしているのは、ディールが落としている涙。
 手を伸ばしてディールの頬に触れると、ディールの周りに散っていた光が収まった。
「リョウナ、生きてる?」
 何を言ってるんだろう。
 あ、そうか、私……。