でも、部屋に入ると彼はもうスプーンでお粥を掬っているところだった。口をもぐもぐと動かしているところを見れば、どうやら彼はもう食べてしまったらしい。 「ごめん、梅干し入れるの忘れてた」 私はそっと手に持っているものを見せた。 「あー、やっぱ要らない」 「へ?」 私は目を丸くする。全く気が変わりやすい人だと呆れていると、それは見当違いだったということがわかった。なぜなら彼が、 「お前、いいお粥作るんだな」 と、いつもより柔らかい表情で微笑んだから。