あれからしばらくの間抱き合っていた私達は、私がくしゃみをしたことでお互い笑い合い、やっと校舎に戻った。そして教室で体操着に着替え、私はようやく先輩への連絡を忘れていたことを思い出す。
私が電話をすると先輩はすぐに教室に駆けつけ、こちらを見るなりギョッと目を見開いた。
「奈湖!……どうしたの?大丈夫?」
「先輩、ごめんなさい。連絡遅くなって」
「そんなことはいいよ。それよりなんでずぶ濡れなの?傘がないなら迎えに行ったのに……って、あれ、高野さん」
「……こんにちは」
先輩はびしょ濡れの私と高野さんを交互に見ると、何故か嬉しそうに微笑む。
「上手くいったようで、なによりだよ」
先輩の言葉に、高野さんはきょとんとしていた。私はなんだか嬉しくて、へらりと微笑む。
窓の外はいつの間にか雨は上がっていて、雲の隙間から日が差し込んでいた。
高野さんはその光景をチラリと見た後、私にまっすぐ視線を向ける。
「小森さん」
「なに?」
「────ありがとう」
その言葉に驚き、ポカンとする私を見て、高野さんは声をあげて笑った。
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