困ったような、傷ついたような笑み。いつもの高野さんからは想像ができないような、弱々しい声色。
その全てが、助けを求めているような気がした。
「高野さん」
「な、に」
「私も同じだったよ。自分の正義感を貫き通して嫌われて、周りに合わせるようになったの。ずっと苦しかった」
「…………」
「けど、たった一人、私を理解してくれる人が現れたの」
息苦しくて、自分が嫌いでどうしようもない。そんな私の分厚い仮面を、先輩は時間を掛けて外してくれた。
俯く高野さんに、私は続ける。
「だから、今度は私が高野さんの理解者になるよ」
「…………え」
「高野さんの気持ち、痛いほど分かるから」
「けど、私小森さんに酷い態度とってたんだよ?」
「ううん、私も高野さんのおかげで、このままの私じゃダメだって、自覚できたから」
「…………」
「口調が強過ぎたり、直すべきところもあるとは思うよ?けど、別に私はそれくらいでは────」
突然、高野さんが持っていた傘が、バサリと地面に落ちる。
強い雨が私達に降り注いだ。
けど、こんなことは関係なしに、高野さんは私をぎゅうっと抱きしめる。
濡れちゃうよ、とか。そんな言葉が出なかったのは、高野さんの肩が小さく震えていたからだ。
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