「小森さんを見てると、自分を見てるようで苛立つの。だからわざと避けて辛く当たった」
「え?」
「────私さ、中学の時、今の小森さんと同じように周りに合わせてばかりだったんだよね」
パタパタと傘に落ちる雨の音が響き、湿った地面の匂いがする。
高野さんは、過去を思い出しているのか目を伏せ、口を噤む。そして、ずっと息を吸い込み言葉を発した。
「思ったことを言わず、周りに合わせてヘラヘラ笑って、興味のないことに興味のあるふりして、おかしいと思うことから目を逸らす」
「…………」
「誰からも嫌われたくなかったし、そうしてれば安全だって思ってたの。けど」
高野さんは、自分の口元を手で覆った。
「────息がずっとしにくくて、溺れてるみたいだった」
同じ、だ。
言葉にならない、それは、少し前までの私だ。まるで合わせ鏡。
それが、今か過去かの話だ。
「結局、そうしてても本当の友達はできなかったし、只々辛かった。一人じゃないのに、一人より寂しくて」
「うん」
「だから、高校ではやめようと思ったんだ。例え一人になっても、自分の正しいと思う、自分を好きでいられる私でいようって」
高野さんは、口元を覆った手をゆっくりと降ろし、ふっと笑う。
「けど、やり過ぎた結果こうなってるんだけどね」
「…………」
「嫌われてるって、知ってはいたけど。あそこでああ言われたらちょっとショックだった」
「……当たり前だよ」
「どうしたら、息ができるようになるんだろう。もう分からない」



