嫌な予感がする。私は人の波をすり抜け、階段を降り、下駄箱に走った。
たくさんの生徒達が靴を履き替えている中、高野さんが自分の下駄箱を覗き固まっていた。
「…………高野さん」
「っ」
高野さんはこちらを振り返り驚いたように目を見開いた後、下駄箱の扉を閉じる。
そして、何の言葉も発さずに、上履きのままで昇降口に向かって歩き出した。
私は思わずそれを追いかけ、肩を掴む。高野さんは振り返り、眉間に皺を寄せ私を睨みつける。
「待って、高野さん。私、高野さんの靴がどこにあるか知ってるの、だから」
「……だから何」
「えっ」
「いつもみたいに周りに合わせたら?私に関わると同じ目に遭うよ」
「な、にそれ」
「そうなりたくないから、あんな愛想笑いして周りに馴染もうと必死になってたんでしょ」
ポツポツ、ポツポツポツ……
曇り、淀んだ空から雨が落ちてくる。そして、それは徐々に勢いを増し、本降りになった。
いつの間にか、昇降口には私と高野さんだけが取り残されていた。



